健康運動指導士は、安全で効果的な運動指導を行う専門家です。
運動によって健康増進や体力向上が期待できる一方で、運動の方法や環境によっては様々な傷害や健康障害が発生することがあります。
第7章「運動傷害と予防」では、
- 熱中症
- 脱水
- 運動誘発性喘息
- 貧血
- オーバートレーニング症候群
など、運動指導者が知っておくべき健康障害について学びます。
本記事では前編として、内科的障害とその予防について解説します。
運動によって生じる健康障害とは
運動に伴う障害は大きく
内科的障害
身体内部の機能異常によるもの
例
- 熱中症
- 脱水
- 貧血
- 不整脈
- 運動誘発性喘息
外科的障害
骨・関節・筋肉・靭帯などの損傷
例
- 捻挫
- 骨折
- 肉離れ
に分類されます。
運動指導現場では、外傷だけでなく内科的障害への対応も重要になります。
スポーツ中の突然死
運動中に最も重篤な事故が突然死です。
突然死とは、
予期しない急激な心停止や循環不全によって死亡すること
をいいます。
突然死の主な原因
若年競技者では
- 肥大型心筋症
- 不整脈
- 先天性心疾患
などが原因となります。
中高年では
- 虚血性心疾患
- 心筋梗塞
- 狭心症
などが多くなります。
突然死を予防するために
運動開始前には
- 問診
- 既往歴確認
- 血圧測定
- メディカルチェック
を実施することが重要です。
特に中高年者の運動指導では十分な注意が必要です。
熱中症
熱中症とは
熱中症とは、
高温多湿環境下で体温調節機能が破綻して発生する障害
です。
夏場の運動指導では最も注意すべき障害の一つです。
熱中症が起こる仕組み
通常、体温が上昇すると
- 発汗
- 皮膚血流増加
によって体温を下げます。
しかし、
- 高温
- 高湿度
- 強い日射
- 脱水
などが重なると放熱ができなくなります。
結果として体温が異常上昇し熱中症が発生します。
熱中症の危険因子
環境要因
- 気温上昇
- 高湿度
- 無風
- 強い日差し
個人要因
- 脱水
- 睡眠不足
- 疲労
- 発熱
- 肥満
運動要因
- 高強度運動
- 長時間運動
が挙げられます。
WBGTとは
熱中症予防で重要な指標です。
WBGT(湿球黒球温度)
とは、
- 気温
- 湿度
- 輻射熱
を総合的に評価した暑熱環境指標です。
近年の運動現場ではWBGTを基準に運動中止や運動強度の調整が行われています。
熱中症の分類
熱失神
立ちくらみ
熱けいれん
筋肉のけいれん
熱疲労
脱水による全身倦怠感
熱射病
重症型
意識障害や高体温を伴う
熱射病は生命に関わる緊急事態です。
熱中症の予防
- WBGT確認
- 十分な水分補給
- 暑熱順化
- 適切な休憩
- 通気性の良い服装
が重要です。
脱水
脱水とは
体内水分が不足した状態です。
運動中は大量の発汗により脱水が起こります。
発汗と体重減少
運動中の体重減少は
ほぼ発汗による水分喪失
と考えられます。
体重の2%以上の減少は運動能力低下につながります。
脱水による影響
- 心拍数増加
- 持久力低下
- 集中力低下
- 体温上昇
が起こります。
重症になると熱中症へ移行します。
水分補給のポイント
運動前
十分な補水
運動中
定期的補給
運動後
失われた量を補う
ことが重要です。
運動誘発性喘息
運動誘発性喘息とは
運動によって気道が狭くなり、
呼吸困難や喘鳴が出現する状態です。
主な症状
- 咳
- 息切れ
- 呼吸困難
- ゼーゼー音
などがみられます。
発生しやすい競技
- 長距離走
- 冬季競技
- 持久系スポーツ
で多くみられます。
予防方法
- 十分なウォーミングアップ
- 寒冷環境への配慮
- 医師の指示による吸入薬使用
が有効です。
貧血
貧血とは
血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態です。
酸素運搬能力が低下するため持久力が低下します。
スポーツ貧血
運動選手にみられる貧血をスポーツ貧血と呼びます。
原因として
- 鉄不足
- 発汗による鉄喪失
- 溶血
- 偏った食事
などがあります。
鉄欠乏性貧血
最も多いタイプです。
特に
- 女性アスリート
- 成長期
で発生しやすいことが知られています。
主な症状
- 疲労感
- 息切れ
- 動悸
- パフォーマンス低下
などです。
予防方法
- 鉄分摂取
- バランスの良い食事
- 定期検査
が重要です。
オーバートレーニング症候群
オーバートレーニングとは
トレーニングと回復のバランスが崩れ、
慢性的疲労状態に陥ること
をいいます。
健康運動指導士試験でも頻出項目です。
主な原因
- 過剰なトレーニング
- 休養不足
- 栄養不足
- 精神的ストレス
です。
身体的症状
- 慢性疲労
- パフォーマンス低下
- 心拍数変化
- 睡眠障害
などがみられます。
心理的症状
- 意欲低下
- 抑うつ傾向
- 集中力低下
- イライラ
などが起こります。
オーバーリーチングとの違い
オーバーリーチング
短期間の疲労蓄積
休養で回復可能
オーバートレーニング
長期間の慢性疲労
回復に数か月以上必要
試験で頻出の比較項目です。
予防方法
- 計画的トレーニング
- 十分な休養
- 栄養管理
- コンディションチェック
が重要です。
試験直前チェック
✓ スポーツ中の突然死
✓ 肥大型心筋症
✓ 熱中症
✓ WBGT
✓ 熱失神
✓ 熱けいれん
✓ 熱疲労
✓ 熱射病
✓ 脱水
✓ 運動誘発性喘息
✓ スポーツ貧血
✓ 鉄欠乏性貧血
✓ オーバーリーチング
✓ オーバートレーニング症候群
第7章前編まとめ
第7章前編では、
運動中に発生する代表的な内科的障害について学びました。
健康運動指導士には、
単に運動を指導するだけではなく、
安全管理
リスクマネジメント
健康障害の予防
も求められます。
特に試験では、
- WBGT
- 熱中症
- 脱水
- スポーツ貧血
- オーバートレーニング症候群
が頻出です。
確実に理解しておきましょう。
【図解】第7章 運動傷害と予防のスライド
※運動傷害と予防(内科的障害・外科的障害)の全体像を整理したスライド
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インプットとアウトプットを繰り返し、合格を目指しましょう。
前編では、
- 熱中症
- 脱水
- 貧血
- オーバートレーニング症候群
などの内科的障害について学びました。
後編では、
- 頭部外傷
- 脳振盪
- 頸部損傷
- 腰痛
- 膝関節障害
- 足関節捻挫
- RICE処置
など、運動現場で遭遇しやすい整形外科的障害について解説します。
1. スポーツ外傷とスポーツ障害
スポーツ外傷とは
一度の大きな外力によって発生するケガです。
代表例
- 骨折
- 脱臼
- 捻挫
- 肉離れ
などがあります。
スポーツ障害とは
繰り返しの動作によって徐々に発生する障害です。
代表例
- 野球肘
- テニス肘
- シンスプリント
- 疲労骨折
などがあります。
試験では両者の違いが頻出です。
2. 頭部外傷
頭部外傷とは
頭部へ強い衝撃が加わることで発生する外傷です。
コンタクトスポーツや転倒事故で発生しやすくなります。
主な症状
- 頭痛
- めまい
- 吐き気
- 意識障害
- 記憶障害
などがみられます。
注意点
頭部外傷は一見軽症に見えても、
後から症状が悪化することがあります。
そのため経過観察が重要です。
3. 脳振盪(のうしんとう)
脳振盪とは
頭部への衝撃によって脳機能が一時的に障害された状態です。
ラグビー
サッカー
柔道
バスケットボール
などで発生します。
主な症状
- 一時的意識消失
- 頭痛
- めまい
- 集中力低下
- 記憶障害
などがあります。
脳振盪が疑われる場合
運動を即座に中止します。
「少し休めば大丈夫」
と判断してはいけません。
セカンドインパクト症候群
脳振盪後に十分回復しないまま再び頭部外傷を受ける状態です。
重篤な脳障害につながる可能性があります。
試験頻出事項です。
4. 頸部損傷
頸部損傷とは
首周辺に発生する外傷です。
コンタクトスポーツで発生しやすくなります。
危険な症状
- 四肢のしびれ
- 筋力低下
- 感覚異常
- 呼吸困難
などがあります。
対応
頸椎損傷が疑われる場合は、
むやみに動かしてはいけません。
医療機関への搬送が最優先です。
5. 肩関節障害
肩関節の特徴
肩関節は人体で最も可動域が大きい関節です。
その反面、
不安定性が高く障害も発生しやすい特徴があります。
肩関節脱臼
スポーツ現場で多い外傷です。
特に前方脱臼が多くみられます。
腱板損傷
肩関節を安定させる腱板が損傷した状態です。
中高年で多くみられます。
インピンジメント症候群
肩関節挙上時に痛みが出る代表的な障害です。
試験頻出項目です。
6. 肘関節障害
野球肘
投球動作の繰り返しにより発生します。
特に成長期に多くみられます。
テニス肘
正式名称は
上腕骨外側上顆炎
です。
手関節伸筋群への負担によって発生します。
予防
- 投球数管理
- フォーム改善
- 柔軟性向上
が重要です。
7. 腰痛
腰痛とは
日本人に最も多い運動器障害の一つです。
健康運動指導士試験でも頻出です。
腰痛の原因
特異的腰痛
原因が明確
- 椎間板ヘルニア
- 脊柱管狭窄症
- 圧迫骨折
など
非特異的腰痛
原因を特定できない
腰痛全体の大部分を占めます。
腰痛予防
- 体幹筋強化
- 柔軟性向上
- 姿勢改善
が重要です。
8. 椎間板ヘルニア
椎間板とは
椎骨と椎骨の間にあるクッションです。
ヘルニアとは
椎間板の髄核が突出する状態です。
主な症状
- 腰痛
- 下肢痛
- しびれ
など
坐骨神経痛を伴うことがあります。
好発部位
L4-L5
L5-S1
が多くみられます。
試験頻出です。
9. 股関節障害
変形性股関節症
関節軟骨の変性によって発生します。
主な症状
- 鼠径部痛
- 可動域制限
- 歩行障害
など
中高年女性に多い特徴があります。
10. 膝関節障害
膝関節の特徴
体重支持を行うため負担が大きい関節です。
変形性膝関節症
高齢者に多い疾患です。
症状
- 膝痛
- 可動域制限
- 歩行障害
半月板損傷
膝関節内の半月板が損傷した状態です。
スポーツ外傷として頻繁にみられます。
前十字靭帯損傷(ACL損傷)
スポーツ現場で重要な外傷です。
方向転換や着地動作で発生しやすく、
女性アスリートに多いことが知られています。
試験頻出項目です。
11. 足関節捻挫
最も多いスポーツ外傷
スポーツ現場で最も発生頻度が高い外傷です。
発生機序
多くは
内反捻挫
です。
足首が内側へひねられることで発生します。
損傷しやすい靭帯
前距腓靭帯
が最も多く損傷されます。
頻出ポイントです。
12. アキレス腱損傷
アキレス腱断裂
中高年のスポーツ愛好家に多くみられます。
主な症状
- 激痛
- 歩行困難
- つま先立ち不能
など
「後ろから蹴られたような感じ」
と表現されることがあります。
13. 応急処置(RICE処置)
RICEとは
スポーツ外傷の基本的応急処置です。
R:Rest
安静
I:Ice
冷却
C:Compression
圧迫
E:Elevation
挙上
目的
- 出血抑制
- 腫脹軽減
- 疼痛軽減
を図ります。
健康運動指導士試験では毎年のように出題される重要事項です。
試験直前チェック
✓ スポーツ外傷
✓ スポーツ障害
✓ 脳振盪
✓ セカンドインパクト症候群
✓ 頸椎損傷
✓ 肩関節脱臼
✓ 野球肘
✓ テニス肘
✓ 腰痛
✓ 椎間板ヘルニア
✓ 半月板損傷
✓ 前十字靭帯損傷
✓ 足関節内反捻挫
✓ 前距腓靭帯
✓ アキレス腱断裂
✓ RICE処置
第7章まとめ
第7章では、
運動現場で発生する様々な傷害とその予防について学びました。
健康運動指導士には、
- 傷害予防
- 早期発見
- 応急処置
- 医療機関への適切な連携
が求められます。
特に試験では、
- 脳振盪
- 椎間板ヘルニア
- 前十字靭帯損傷
- 足関節捻挫
- RICE処置
が頻出ですので重点的に学習しましょう。
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インプットとアウトプットを繰り返し、合格を目指しましょう。