健康運動指導士試験では、第5章「機能解剖とバイオメカニクス」は運動の仕組みを科学的に理解するための重要な分野です。
運動指導の現場では、
- なぜ効率よく動けるのか
- なぜフォームが重要なのか
- なぜ関節に負担がかかるのか
を説明する場面が多くあります。
その基礎となるのがバイオメカニクスです。
本記事では、
- バイオメカニクスの基礎
- 力と運動
- ニュートンの法則
- エネルギー論
- 力学的仕事
について解説します。
バイオメカニクスとは
バイオメカニクスとは、
身体運動を力学的に分析する学問
です。
人間の身体は常に様々な力を受けながら動いています。
例えば、
- 歩く
- 走る
- 跳ぶ
- 投げる
といった動作はすべて力学法則に従っています。
健康運動指導士には、
「どのような力が身体に働いているのか」
を理解したうえで安全な運動指導を行うことが求められます。
1. 身体に働く力
外力とは
身体の外部から加わる力を外力といいます。
代表的なものは、
- 重力
- 地面反力
- 空気抵抗
- 水の抵抗
です。
私たちは普段意識していませんが、立っているだけでも重力と地面反力を受けています。
重力
重力とは地球が物体を引き付ける力です。
重力加速度は
9.8m/s²
です。
月面では地球の約1/6となります。
ジャンプ競技で月面なら高く跳べるのはこのためです。
慣性力
動いている物体は動き続けようとし、
止まっている物体は止まり続けようとします。
この性質を慣性といいます。
例えば急ブレーキをかけると身体が前へ倒れそうになります。
これは身体が元の運動状態を保とうとするためです。
力の三要素
力には必ず
力の大きさ
どの程度の強さか
力の方向
どちらへ向かうか
力の作用点
どこに力が加わるか
の3つがあります。
試験では「力の三要素」が頻出です。
力の合成と分解
複数の力が作用している場合、
それらを一つの力にまとめることを
力の合成
といいます。
逆に、
一つの力を複数方向へ分けることを
力の分解
といいます。
運動分析では非常に重要な考え方です。
摩擦力
物体同士が接触すると発生する抵抗を摩擦力といいます。
静止摩擦
動き出す前の摩擦
動摩擦
動いている時の摩擦
一般に
静止摩擦 > 動摩擦
となります。
歩行やランニングでは適度な摩擦が必要です。
空気抵抗と水の抵抗
物体が流体中を移動すると抵抗を受けます。
空気抵抗
ランニング
自転車競技
スキー
などに影響します。
水の抵抗
空気抵抗よりはるかに大きい
水泳でフォームが重要なのはこのためです。
2. ニュートンの運動法則
ニュートンの法則は運動力学の基本です。
試験では頻出事項です。
第1法則:慣性の法則
外力が働かなければ、
静止物体は静止し続け、
運動物体は等速直線運動を続けます。
これが慣性の法則です。
第2法則:運動方程式
最重要公式です。
F:力
m:質量
a:加速度
同じ力なら軽い物体ほど加速しやすくなります。
第3法則:作用・反作用の法則
物体に力を加えると、
同じ大きさで反対方向の力が返ってきます。
これを
作用・反作用
といいます。
歩行やランニングでは、
地面を後ろへ押す
↓
地面から前方への反力を受ける
↓
前へ進む
という仕組みです。
3. 直線運動と回転運動
直線運動
物体が一直線上を移動する運動です。
例
- 歩行
- 走行
- スプリント
回転運動
身体や物体が回転軸の周囲を回る運動です。
例
- ハンマー投げ
- フィギュアスケート
- バットスイング
人間の身体運動では両者が組み合わさっています。
求心力
回転運動では中心方向へ向かう力が必要です。
これを求心力といいます。
ハンマー投げでは求心力が重要な役割を果たします。
4. エネルギーとは
エネルギーとは、
仕事をする能力
です。
人体は食事から得た化学エネルギーを運動エネルギーへ変換しています。
力学的エネルギー
力学的エネルギーは
- 運動エネルギー
- 位置エネルギー
から構成されます。
運動エネルギー
運動している物体が持つエネルギーです。
速度が2倍になると、
運動エネルギーは4倍になります。
運動強度が急激に増える理由です。
位置エネルギー
高い場所にある物体が持つエネルギーです。
階段昇降や登山では位置エネルギーが大きく関与します。
エネルギー保存則
エネルギーは形を変えても消滅しません。
位置エネルギー
↓
運動エネルギー
↓
熱エネルギー
のように変換されます。
5. 力学的仕事
仕事とは
力学における仕事とは、
力 × 移動距離
です。
仕事量は
で表されます。
正の仕事
力と移動方向が同じ
例
- ダンベルを持ち上げる
- ジャンプする
負の仕事
力と移動方向が反対
例
- 着地
- 階段を下りる
仕事をしない場合
力を加えていても移動しなければ仕事はゼロです。
壁を押しても壁が動かなければ仕事量はゼロになります。
6. 筋収縮と力学的仕事
筋肉の収縮には3種類あります。
求心性収縮(短縮性収縮)
筋肉が短くなりながら力を発揮
例
- ダンベルを持ち上げる
遠心性収縮(伸張性収縮)
筋肉が伸ばされながら力を発揮
例
- ダンベルを下ろす
- 着地動作
等尺性収縮
筋長が変化しない
例
- プランク
- 壁押し
試験頻出事項です。
7. 地面反力
地面反力とは、
地面から身体へ返ってくる反力です。
歩行や走行では、
地面を押す
↓
地面反力を受ける
↓
前進する
という流れになります。
試験直前チェック
✓ 力の三要素
✓ 重力と慣性力
✓ 摩擦力
✓ ニュートンの3法則
✓ 作用・反作用
✓ 求心力
✓ 運動エネルギー
✓ 位置エネルギー
✓ エネルギー保存則
✓ 力学的仕事
✓ 求心性収縮
✓ 遠心性収縮
✓ 等尺性収縮
✓ 地面反力
まとめ
第5章前編では、
身体運動を理解するための力学の基礎を学びました。
運動は単なる筋力発揮ではなく、
- 力
- 慣性
- エネルギー
- 仕事
の相互作用によって成り立っています。
健康運動指導士試験では、
特に
- ニュートンの法則
- 力学的仕事
- エネルギー論
- 地面反力
が頻出です。
まずはこれらの概念を確実に理解しておきましょう。
【図解】第5章 機能解剖とバイオメカニクスのスライド
※バイオメカニクス・機能解剖学・歩行分析・水中運動の全体像をまとめたスライド
Skip to PDF content次回の後編では、
- 機能解剖学概論①
- 機能解剖学概論②
- 陸上での運動・動作各論
- 水泳・水中運動
について解説します。
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インプットとアウトプットを繰り返し、合格を目指しましょう。
前編では、バイオメカニクスの基礎となる力学やエネルギーについて学びました。
後編では、
- 骨と関節の構造
- ROM(関節可動域)
- アライメント
- トルク
- 主動筋・拮抗筋・協働筋
- 歩行分析
- ランニング
- 水泳・水中運動
について解説します。
1. 骨と関節の構造
骨格の役割
骨格には次のような役割があります。
身体の支持
身体の形を維持する
運動の支点
筋肉と協力して運動を生み出す
内臓の保護
頭蓋骨や胸郭が重要な臓器を守る
カルシウムの貯蔵
骨はカルシウムの貯蔵庫でもあります。
骨格の分類
人体には約200個の骨があります。
中軸骨格
- 頭蓋骨
- 脊柱
- 胸郭
付属骨格
- 上肢
- 下肢
- 肩甲帯
- 骨盤帯
試験では骨格の分類も頻出です。
関節とは
骨と骨を連結する部分を関節といいます。
関節があることで身体は自由に動くことができます。
関節の種類
蝶番関節
例
- 肘関節
- 膝関節
屈曲・伸展が中心
球関節
例
- 肩関節
- 股関節
多方向へ動く
車軸関節
例
- 橈尺関節
回旋運動を行う
楕円関節
例
- 手関節
比較的自由度が高い
試験では図と名称の組み合わせが出題されます。
2. ROM(関節可動域)
ROMとは
ROM(Range of Motion)
関節可動域のことです。
関節がどの程度動くかを角度で表します。
ROMを制限する要因
骨性要因
骨同士の接触
靭帯
過剰な動きを防ぐ
関節包
関節を包む組織
筋肉
柔軟性不足でROM低下
痛み
防御反応による制限
ストレッチングとROM
ストレッチを継続すると
- 筋の柔軟性向上
- 関節可動域改善
が期待できます。
健康運動指導士試験では、
「ROM向上=筋肉だけでなく関節包や靭帯も関与する」
ことを理解しておきましょう。
3. アライメント
アライメントとは
骨や関節の配列状態をアライメントといいます。
姿勢評価の基本となる概念です。
良好なアライメント
横から見た場合
- 耳垂
- 肩峰
- 大転子
- 膝関節前方
- 外果前方
がほぼ一直線上に並びます。
不良アライメント
猫背
胸椎後弯増大
反り腰
腰椎前弯増大
X脚
膝が内側へ入る
O脚
膝が外側へ開く
Q-angle
膝関節アライメントを評価する重要指標です。
女性は男性よりQ-angleが大きい傾向があります。
スポーツ障害との関連が試験で問われます。
4. トルクとモーメントアーム
トルクとは
関節を回転させる力を
トルク
といいます。
モーメントアーム
回転中心から力の作用線までの距離
をモーメントアームといいます。
モーメントアームが長い場合
- 大きなトルクを発生
- 力を出しやすい
モーメントアームが短い場合
- トルクは小さい
- 速度に有利
野球のピッチングやテニスサーブなどでは重要な考え方です。
5. 骨格筋の役割
骨格筋とは
骨格筋は随意運動を担う筋肉です。
人体には約400~500種類存在します。
主動筋
運動を起こす主役の筋肉
例
肘屈曲
→上腕二頭筋
拮抗筋
主動筋と反対の働きをする筋肉
例
肘屈曲時
→上腕三頭筋
協働筋
主動筋を補助する筋肉
運動を効率よく行うために働きます。
固定筋
関節を安定させる筋肉
体幹筋群などが代表例です。
単関節筋と多関節筋
単関節筋
1つの関節のみをまたぐ
多関節筋
複数関節をまたぐ
代表例
- 大腿直筋
- ハムストリングス
- 上腕二頭筋
多関節筋はパワー伝達に重要です。
6. 歩行分析
歩行周期
歩行は
立脚期
↓
遊脚期
の繰り返しです。
立脚期
足が地面に接している期間
約60%
遊脚期
足が地面から離れている期間
約40%
歩行速度
歩行速度は
歩幅
×
歩調(ケイデンス)
で決まります。
地面反力
歩行時には
- 垂直方向
- 前後方向
- 左右方向
の地面反力が働いています。
この力を利用して前進します。
歩行で活動する筋
前脛骨筋
つま先の引き上げ
下腿三頭筋
蹴り出し
大腿四頭筋
膝安定化
大殿筋
体幹安定化
試験頻出事項です。
7. ランニング
歩行との違い
ランニングでは
両足が地面から離れる
「浮遊期」
が存在します。
ランニング時の特徴
- 地面反力増大
- エネルギー消費増大
- 筋活動増大
が起こります。
SSC(伸張―短縮サイクル)
着地
↓
筋が伸張
↓
即座に短縮
この反応によって効率よく走ることができます。
ランニングやジャンプの重要概念です。
8. 水泳・水中運動
水中運動の特徴
陸上運動と最も異なるのは
浮力
水圧
水抵抗
の存在です。
浮力
アルキメデスの原理によって生じます。
身体が軽く感じるため、
- 肥満者
- 高齢者
- 関節疾患患者
にも適しています。
水圧
水深が深いほど増加します。
効果
- 静脈還流促進
- 浮腫改善
などがあります。
水抵抗
水中では抵抗が大きくなります。
そのため
ゆっくり動いても運動負荷を得られる
特徴があります。
水泳の特徴
推進力を得るためには
- ストローク
- キック
が重要です。
抵抗を減らすため
ストリームライン姿勢
が求められます。
水中歩行
近年特に注目されています。
利点
- 関節負担軽減
- 転倒リスク低減
- 心肺機能向上
適応
- 高齢者
- 肥満者
- 整形外科疾患患者
試験直前チェック
✓ ROM(関節可動域)
✓ アライメント
✓ Q-angle
✓ トルク
✓ モーメントアーム
✓ 主動筋
✓ 拮抗筋
✓ 協働筋
✓ 多関節筋
✓ 立脚期60%
✓ 遊脚期40%
✓ 歩幅と歩調
✓ SSC
✓ 浮力
✓ 水圧
✓ 水抵抗
✓ ストリームライン
第5章まとめ
第5章では、
「人はどのように動くのか」
を機能解剖学とバイオメカニクスの視点から学びました。
健康運動指導士試験では、
- ROM
- アライメント
- トルク
- 主動筋と拮抗筋
- 歩行分析
- 水中運動
が頻出です。
単なる暗記ではなく、
「なぜその動きが起こるのか」
を理解すると得点につながります。
さらに学習を進めたい方へ
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インプットとアウトプットを繰り返し、合格を目指しましょう。