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【図解】健康運動指導士試験対策 第3章 生活習慣病(NCDs)|要点まとめ

健康運動指導士試験では、第3章「生活習慣病(NCDs)」は最重要分野の一つです。

メタボリックシンドロームをはじめ、高血圧、脂質異常症、糖尿病、虚血性心疾患、ロコモティブシンドローム、認知症など、運動指導の現場で関わる疾患が幅広く登場します。

本記事では、第3章全11項目の重要ポイントをまとめて解説します。

 

目次

【図解】第3章 生活習慣病(NCDs)スライド

※生活習慣病(NCDs)の全体像、各疾患の関連性、予防・改善のための運動療法をまとめたスライド

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第3章-1 メタボリックシンドロームとは?診断基準・運動療法・予防法をわかりやすく解説

メタボリックシンドローム(MetS)は、内臓脂肪の蓄積を背景として、高血圧・脂質異常症・高血糖などが重なった状態を指します。放置すると心筋梗塞や脳卒中などの重大な循環器疾患のリスクが高まるため、早期の予防と改善が重要です。

本記事では、メタボリックシンドロームの概要、診断基準、運動の役割、食事療法について解説します。


メタボリックシンドロームとは

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の過剰な蓄積に加え、以下の危険因子が重複した状態です。

  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 高血糖
  • インスリン抵抗性

これらの危険因子は共通の基盤として内臓脂肪蓄積を持っており、複数重なることで動脈硬化が進行しやすくなります。


なぜ問題なのか

メタボリックシンドロームが進行すると、

  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 脳梗塞
  • 糖尿病
  • 慢性腎臓病
  • 認知症

などの発症リスクが高まります。

特に内臓脂肪の増加は、血圧・血糖・脂質代謝に悪影響を及ぼし、全身の血管障害を引き起こします。


日本の診断基準

日本では、まず内臓脂肪蓄積の有無を判定します。

必須条件

ウエスト周囲径

  • 男性:85cm以上
  • 女性:90cm以上

これに加えて以下の3項目のうち2項目以上に該当するとメタボリックシンドロームと診断されます。

① 脂質異常

  • 中性脂肪(TG)150mg/dL以上
  • HDLコレステロール40mg/dL未満

いずれか、または両方

② 血圧異常

  • 収縮期血圧130mmHg以上
  • 拡張期血圧85mmHg以上

③ 血糖異常

  • 空腹時血糖110mg/dL以上

日本人に多いメタボリックシンドローム

国民健康・栄養調査では、40~74歳におけるメタボリックシンドロームが強く疑われる者の割合は、

  • 男性:約30%
  • 女性:約10%

と報告されています。

特に男性では加齢とともに増加し、60歳以降では高い割合となっています。


特定健診・特定保健指導との関係

2008年度から始まった特定健診・特定保健指導では、メタボリックシンドローム対策が中心となっています。

健診結果から、

  • 情報提供
  • 動機付け支援
  • 積極的支援

の3段階に分類され、生活習慣改善の支援が行われます。


腹囲測定のポイント

腹囲は立位・軽呼気時に測定します。

測定位置は、

  • 肋骨下縁と腸骨稜上縁の中間

が基本です。

メジャーは水平に保ち、皮膚を圧迫しないように測定します。


運動がメタボ改善に重要な理由

1. 内臓脂肪を減らす

食事療法だけでも内臓脂肪は減少しますが、運動を組み合わせることでエネルギー消費量が増加し、減量効果が高まります。

重要なのは、

「どの運動をするか」よりも「消費エネルギー量を増やすこと」

です。


2. 運動強度より継続が重要

研究では、

  • 高強度運動
  • 中等度運動

どちらでも内臓脂肪減少効果が認められています。

そのため、

「少しきつい運動を短期間行う」

よりも、

「続けられる運動を長期間継続する」

ことが重要です。


3. フィットネスレベルを高める

身体活動量や体力レベルが高い人ほど、

  • メタボリックシンドローム
  • 心血管疾患
  • 糖尿病

の発症率が低いことが報告されています。


推奨される運動例

有酸素運動

  • ウォーキング
  • 速歩
  • ジョギング
  • サイクリング
  • 水中歩行

筋力トレーニング

  • スクワット
  • レッグプレス
  • 椅子立ち上がり運動
  • 自重トレーニング

有酸素運動と筋力トレーニングの併用が効果的です。


食事療法のポイント

地中海食

特徴

  • オリーブオイル
  • 野菜
  • 果物
  • 豆類
  • 魚介類

を多く摂取する食事パターンです。

血糖・血圧・脂質の改善効果が報告されています。


DASH食

高血圧予防を目的とした食事法です。

特徴

  • 野菜
  • 果物
  • 低脂肪乳製品
  • 全粒穀物
  • 豆類

を積極的に摂取します。


エネルギー密度を下げる

同じ量を食べても、

  • 野菜
  • きのこ
  • 海藻

などを増やすことで摂取エネルギーを抑えることができます。

満腹感を保ちながら減量しやすくなるため、メタボ改善に有効です。


メタボ改善プログラムの考え方

メタボリックシンドローム改善の目標は、

体重の5~10%減少

です。

例えば体重70kgの人なら、

  • 3.5~7kg減量

が目標となります。

減量後も身体活動を継続し、リバウンドを防ぐことが重要です。


まとめ

メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積を中心として高血圧・脂質異常症・高血糖が重なった状態です。

メタボ改善のポイント

  • 腹囲を減らすことが最優先
  • 体重の5~10%減量を目標にする
  • 有酸素運動を継続する
  • 筋力トレーニングを併用する
  • 地中海食やDASH食を参考にする
  • 日常の身体活動量を増やす

メタボリックシンドロームは生活習慣の改善によって予防・改善が可能です。特定健診の結果を活用しながら、運動と食事の両面から取り組むことが健康寿命の延伸につながります。


第3章-2 肥満・肥満症とは?診断基準・健康リスク・運動療法をわかりやすく解説

肥満は単に体重が多い状態ではなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。しかし、肥満者のすべてが病気というわけではありません。健康障害を伴う場合は「肥満症」と診断され、治療の対象となります。

本記事では、肥満と肥満症の違い、診断基準、健康リスク、運動・食事による改善方法について解説します。


肥満と肥満症の違い

肥満とは

肥満は体脂肪が過剰に蓄積した状態です。

日本ではBMI(Body Mass Index)を用いて判定します。

BMI=\frac{体重(kg)}{身長(m)^2}

BMIによる判定

  • BMI18.5未満:低体重(やせ)
  • BMI18.5~24.9:普通体重
  • BMI25以上:肥満

とされています。


肥満症とは

肥満症とは、

BMI25以上の肥満者で、健康障害を伴う、または将来的に健康障害を起こす危険性が高い状態

を指します。

つまり、

  • 肥満=体脂肪が多い状態
  • 肥満症=治療が必要な肥満

という違いがあります。


肥満症で問題となる健康障害

肥満症の診断対象となる主な健康障害には次のようなものがあります。

代謝・循環器系

  • 2型糖尿病
  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 高尿酸血症
  • 冠動脈疾患
  • 脳梗塞

消化器系

  • 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)

呼吸器系

  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
  • 肥満低換気症候群

整形外科系

  • 変形性膝関節症
  • 腰痛症

などがあります。


原発性肥満と二次性肥満

原発性肥満

最も多いタイプです。

原因は、

  • 過食
  • 運動不足
  • 生活習慣の乱れ
  • 遺伝的要因

などが複合して発症します。


二次性肥満

病気や薬剤によって起こる肥満です。

  • 内分泌疾患
  • 視床下部疾患
  • 薬剤性肥満

などがあります。


内臓脂肪型肥満が危険な理由

肥満には

  • 皮下脂肪型肥満
  • 内臓脂肪型肥満

があります。

特に内臓脂肪型肥満は、

  • 糖尿病
  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 動脈硬化

との関連が強いことが知られています。


内臓脂肪が病気を引き起こす仕組み

① 脂肪細胞の肥大化

脂肪細胞が大きくなると、

  • インスリン抵抗性
  • 慢性炎症

が生じやすくなります。

その結果、

  • 高血糖
  • 高血圧
  • 脂質異常症

が進行します。


② 異所性脂肪蓄積

脂肪を蓄える能力を超えると、

  • 肝臓
  • 骨格筋
  • 膵臓

など本来脂肪を蓄えない場所に脂肪が蓄積します。

これを異所性脂肪と呼び、糖尿病や動脈硬化の原因となります。


③ DOHaD仮説

胎児期や乳幼児期の栄養状態が将来の肥満や生活習慣病の発症に影響するという考え方です。

近年注目されている概念です。


減量目標の考え方

以前は標準体重を目標とする考え方が一般的でした。

しかし現在では、

まず体重の3~5%減量

でも健康状態が改善することがわかっています。

日本肥満学会では、

  • BMI25~34.9:3%以上減量
  • BMI35以上:5~10%減量

を目標としています。


食事療法の基本

肥満改善で最も重要なのは、

摂取エネルギーを消費エネルギーより少なくすること

です。

推奨される方法

  • 適正なエネルギー制限
  • 野菜を増やす
  • 高脂肪食品を減らす
  • 間食を控える
  • アルコールを適量にする

などが挙げられます。


肥満治療の選択肢

行動療法

  • 食事記録
  • 体重記録
  • 生活習慣改善

薬物療法

近年では、

  • GLP-1受容体作動薬
  • リパーゼ阻害薬

などが使用されています。


外科治療

高度肥満では、

  • 胃バイパス術
  • スリーブ状胃切除術

などの減量手術が行われる場合があります。


運動療法の減量効果

運動だけで大幅な減量を達成することは容易ではありません。

しかし運動には、

  • 体脂肪減少
  • 血糖改善
  • 血圧改善
  • 心肺機能向上
  • リバウンド予防

という重要な効果があります。


推奨される身体活動量

減量のためには、

  • 週150分以上の中等度運動

が推奨されています。

さらに減量維持には、

  • 週200~300分程度

の身体活動が望ましいとされています。


肥満者の運動処方

有酸素運動

  • ウォーキング
  • 自転車エルゴメーター
  • 水中運動

など関節への負担が少ない運動が適しています。


レジスタンス運動

筋力維持やサルコペニア予防のために重要です。

  • スクワット
  • レッグプレス
  • チェアスタンド

など

有酸素運動との併用が推奨されます。


運動実施時の注意点

肥満者では、

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 心血管疾患
  • 整形外科的疾患

を合併していることがあります。

そのため、

  • 運動前のメディカルチェック
  • 低~中強度から開始
  • 徐々に運動量を増やす

ことが重要です。


リバウンドが起こる理由

減量すると体重だけでなく基礎代謝も低下します。

そのため同じ食事量でも再び体重が増えやすくなります。

これを防ぐには、

  • 継続的な身体活動
  • 定期的な体重測定
  • 長期的な生活習慣改善

が必要です。


まとめ

肥満は体脂肪が過剰に蓄積した状態であり、健康障害を伴う場合は肥満症として治療対象になります。

肥満改善のポイント

  • BMI25以上は肥満
  • 内臓脂肪型肥満に注意
  • まずは3~5%の減量を目指す
  • 食事療法と運動療法を併用する
  • 週150分以上の運動を継続する
  • リバウンド予防のため運動習慣を維持する

肥満症の改善は単なる体重減少ではなく、健康寿命の延伸と生活習慣病予防につながります。運動と食事を無理なく継続し、長期的な健康管理を行いましょう。


3. 高血圧

高血圧は脳卒中や心筋梗塞の最大の危険因子です。

診察室血圧

140/90mmHg以上

家庭血圧

135/85mmHg以上

改善方法

  • 減塩
  • 体重管理
  • 運動習慣
  • 節酒

有酸素運動は降圧効果が期待できます。

第3章-4 脂質異常症とは?診断基準・動脈硬化との関係・運動療法をわかりやすく解説

脂質異常症は、血液中のコレステロールや中性脂肪が基準値から外れた状態を指します。自覚症状がほとんどないため見逃されがちですが、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞の重要な危険因子となります。

本記事では、脂質異常症の種類、診断基準、動脈硬化との関係、予防・改善のための運動療法と食事療法について解説します。


脂質異常症とは

脂質異常症とは、血液中の脂質の値が異常な状態をいいます。

健康診断では主に次の項目が測定されます。

  • LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
  • HDLコレステロール(善玉コレステロール)
  • 中性脂肪(TG)
  • non-HDLコレステロール

これらの値から動脈硬化のリスクを評価します。


脂質を運ぶ「リポ蛋白」とは

脂質は水に溶けないため、そのままでは血液中を移動できません。

そこでリポ蛋白(リポプロテイン)という運搬体によって全身へ運ばれます。

主な種類は次のとおりです。

カイロミクロン(CM)

食事由来の脂肪を運搬

VLDL

肝臓で作られた中性脂肪を運搬

LDL

コレステロールを全身へ運搬

HDL

余分なコレステロールを回収して肝臓へ戻す

このため、

  • LDL=悪玉コレステロール
  • HDL=善玉コレステロール

と呼ばれています。


脂質異常症の診断基準

日本動脈硬化学会の診断基準では次のように定められています。

LDLコレステロール

  • 140mg/dL以上:高LDLコレステロール血症
  • 120~139mg/dL:境界域

HDLコレステロール

  • 40mg/dL未満:低HDLコレステロール血症

中性脂肪(TG)

  • 空腹時150mg/dL以上
  • 随時採血175mg/dL以上

non-HDLコレステロール

  • 170mg/dL以上:高値

と判定されます。


脂質異常症の分類

表現型分類

増加するリポ蛋白によって分類されます。

  • Ⅰ型:カイロミクロン増加
  • Ⅱa型:LDL増加
  • Ⅱb型:LDL+VLDL増加
  • Ⅲ型:レムナント増加
  • Ⅳ型:VLDL増加
  • Ⅴ型:カイロミクロン+VLDL増加

日本人ではⅡa型、Ⅱb型、Ⅳ型が多いとされています。


原発性脂質異常症

遺伝的要因が主体

  • 家族性高コレステロール血症

続発性脂質異常症

他の病気や薬剤が原因

  • 糖尿病
  • 甲状腺機能低下症
  • ネフローゼ症候群
  • 慢性腎疾患
  • ステロイド薬使用

などがあります。


脂質異常症の疫学

加齢による変化は男女で異なります。

LDLコレステロール

50歳代以前は男性が高い傾向

HDLコレステロール

女性が男性より高い

中性脂肪

男性の方が高い傾向

がみられます。


なぜ脂質異常症が危険なのか

LDLコレステロールの増加

LDLが増えると血管壁へ侵入しやすくなります。

血管内で酸化されたLDLはマクロファージに取り込まれ、

  • 泡沫細胞
  • プラーク

を形成します。

これが動脈硬化の始まりです。


HDLコレステロールの低下

HDLには余分なコレステロールを回収する働きがあります。

HDLが少なくなると動脈硬化を抑制する力が弱くなります。


中性脂肪の増加

高TG血症は、

  • 動脈硬化
  • メタボリックシンドローム
  • 糖尿病

との関連が強くなります。


メタボリックシンドロームとの関係

メタボリックシンドロームでは、

  • TG 150mg/dL以上
  • HDL-C 40mg/dL未満

が判定基準として用いられています。

内臓脂肪蓄積を背景として、

  • 高血圧
  • 高血糖
  • 脂質異常

が重なり、心血管疾患リスクが大きく上昇します。


リスク別脂質管理目標

脂質異常症では患者ごとのリスクに応じて目標値が異なります。

低リスク

LDL-C 160mg/dL未満

中リスク

LDL-C 140mg/dL未満

高リスク

LDL-C 120mg/dL未満

冠動脈疾患既往など二次予防

LDL-C 100mg/dL未満
(場合によっては70mg/dL未満を考慮)

とされています。


生活習慣改善のポイント

脂質異常症の治療の基本は生活習慣の改善です。

食事のポイント

控えたい食品

  • 脂身の多い肉
  • 加工肉
  • 菓子類
  • アルコール過剰摂取

積極的に摂りたい食品

  • 魚類
  • 大豆製品
  • 野菜
  • 海藻
  • きのこ
  • ナッツ類

目標

  • 食物繊維25g以上/日
  • 食塩6g未満/日

が推奨されています。


運動療法の効果

運動療法は脂質異常症改善の重要な柱です。

継続的な有酸素運動により、

  • HDL-C増加
  • TG低下
  • LDL-C低下

が期待できます。


推奨される運動

有酸素運動

  • 速歩
  • ウォーキング
  • スロージョギング
  • サイクリング
  • 水泳

など

強度

ややきつい程度

ボルグスケール11~13程度

頻度

  • 毎日30分以上
  • 週150分以上

が目標です。


身体活動基準2013

18~64歳では

  • 3METs以上の身体活動を毎日60分

が推奨されています。

65歳以上では

  • 強度を問わず毎日40分以上の身体活動

が推奨されています。


運動時の注意点

以下のような場合には運動開始前に医師への相談が必要です。

  • 心疾患
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 腎疾患
  • 運動時の胸痛や息切れ

を有する場合です。

安全性を確認したうえで運動を実施することが重要です。


まとめ

脂質異常症は動脈硬化を進行させる重要な危険因子です。

脂質異常症改善のポイント

  • LDLコレステロールを下げる
  • HDLコレステロールを増やす
  • 中性脂肪を減らす
  • 食事内容を見直す
  • 有酸素運動を継続する
  • メタボリックシンドロームを予防する

自覚症状が少ないからこそ、健康診断の結果を確認し、早期から生活習慣の改善に取り組むことが大切です。


第3章-5 耐糖能異常・糖尿病とは?診断基準・合併症・運動療法をわかりやすく解説

糖尿病は、インスリンの作用不足によって血糖値が慢性的に高くなる病気です。初期には自覚症状が少ないものの、放置すると網膜症・腎症・神経障害などの重篤な合併症を引き起こし、さらに心筋梗塞や脳卒中のリスクも高めます。

本記事では、糖尿病の種類、診断基準、合併症、運動療法・食事療法について解説します。


糖尿病とは

糖尿病とは、インスリンの分泌不足や作用低下によって血糖値が高い状態が続く病気です。

糖尿病は大きく分けて、

  • 1型糖尿病
  • 2型糖尿病

に分類されます。


1型糖尿病と2型糖尿病の違い

1型糖尿病

膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなる病気です。

特徴

  • 若年発症が多い
  • インスリン治療が必須
  • 自己免疫が関与

2型糖尿病

日本人の糖尿病の大部分を占めます。

主な原因

  • 肥満
  • 運動不足
  • 過食
  • 遺伝的素因
  • 加齢

などです。


2型糖尿病が発症する仕組み

2型糖尿病では、

インスリン分泌低下

膵臓から分泌されるインスリンが不足する

インスリン抵抗性

インスリンが効きにくくなる

この2つが組み合わさることで高血糖が生じます。

特に、

  • 内臓脂肪蓄積
  • 肥満
  • 運動不足

はインスリン抵抗性を悪化させる重要な要因です。


糖尿病の診断基準

糖尿病診断では血糖値とHbA1cが重要です。

空腹時血糖

  • 100mg/dL未満:正常域
  • 100~109mg/dL:正常高値
  • 110~125mg/dL:境界域
  • 126mg/dL以上:糖尿病型

HbA1c

  • 5.6%未満:正常域
  • 5.6~5.9%:注意
  • 6.0~6.4%:糖尿病予備群
  • 6.5%以上:糖尿病型

とされています。


糖尿病患者は増加している

厚生労働省の国民健康・栄養調査では、

  • 糖尿病が強く疑われる者
  • 糖尿病の可能性を否定できない者

を合わせると約2,000万人に達すると推計されています。

また年齢が高くなるほど割合は増加し、特に高齢男性で高率となっています。


糖尿病の三大合併症

高血糖が長期間続くと細小血管障害が進行します。

① 糖尿病網膜症

網膜の血管が障害される

  • 視力低下
  • 失明

の原因になります。


② 糖尿病腎症

腎臓の血管障害

  • たんぱく尿
  • 腎機能低下
  • 人工透析

につながります。


③ 糖尿病神経障害

末梢神経障害により

  • 手足のしびれ
  • 感覚低下
  • 自律神経障害

が生じます。


大血管障害にも注意

糖尿病では動脈硬化が進みやすくなります。

その結果、

  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 脳梗塞
  • 末梢動脈疾患

などの発症リスクが高まります。


糖尿病治療の目標

糖尿病治療の目的は、

  • 血糖管理
  • 血圧管理
  • 脂質管理

を行いながら、健康な人と変わらない寿命と生活の質(QOL)を維持することです。


HbA1c目標値

一般的には

  • HbA1c 7.0%未満

が合併症予防の目標です。

ただし、

  • 高齢者
  • 合併症の有無
  • 低血糖リスク

によって個別に設定されます。


糖尿病予防における生活習慣改善

有名なDPP(糖尿病予防プログラム)では、

  • 7%程度の減量
  • 週150分以上の身体活動

を行った生活習慣介入群で、糖尿病発症リスクが58%低下しました。


食事療法のポイント

糖尿病治療の基本は食事療法です。

実践ポイント

  • 腹八分目を心がける
  • 食品の種類を増やす
  • 動物性脂肪を控える
  • 野菜・海藻・きのこを増やす
  • 3食規則正しく食べる
  • ゆっくりよく噛む
  • 食べる順番を工夫する

ことが推奨されています。


エネルギー摂取量の考え方

目標エネルギー量は、

目標体重 × 身体活動係数

で計算します。

目標体重の目安

目標体重(kg)=身長(m)^2\times22


運動療法の効果

運動療法には

急性効果

運動直後から血糖値を下げる

慢性効果

継続することで

  • インスリン感受性向上
  • 血糖コントロール改善
  • 体脂肪減少

が期待できます。


運動で血糖が下がる仕組み

筋肉が収縮すると、

GLUT4という糖輸送体が細胞膜へ移動し、血液中のブドウ糖を筋肉へ取り込みます。

その結果、

  • 血糖値低下
  • インスリン抵抗性改善

が起こります。


糖尿病に推奨される運動

有酸素運動

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • 水泳
  • 水中歩行

レジスタンス運動

  • スクワット
  • ダンベル運動
  • 椅子立ち座り運動

バランス運動

  • 片足立ち
  • ステップ練習

ストレッチ

柔軟性維持のために重要です。


運動処方の目安

強度

中等度運動

  • 最大酸素摂取量の約50%
  • ややきつい程度

頻度

  • 毎日実施が理想
  • 少なくとも週3日以上

時間

  • 1回20~60分
  • 週150分以上

が推奨されています。


運動を控えるべき場合

以下の場合は運動を中止または医師へ相談します。

  • 血糖コントロールが著しく不良
  • 増殖網膜症
  • 重度腎症
  • 重症神経障害
  • 重症心疾患

などです。


運動時の注意点

糖尿病患者では低血糖に注意が必要です。

特に、

  • インスリン治療中
  • SU薬服用中

の場合は、

  • 補食を携帯する
  • 空腹時運動を避ける
  • 足の傷を確認する

などの対策が必要です。


薬物療法

食事療法・運動療法だけで改善しない場合は薬物療法を行います。

主な薬剤

  • ビグアナイド薬(メトホルミン)
  • DPP-4阻害薬
  • GLP-1受容体作動薬
  • SGLT2阻害薬
  • スルホニル尿素薬
  • インスリン製剤

などがあります。


まとめ

糖尿病はインスリンの作用不足によって生じる慢性疾患であり、放置すると網膜症・腎症・神経障害や心血管疾患を引き起こします。

糖尿病予防・改善のポイント

  • 適正体重を維持する
  • 食事療法を継続する
  • 週150分以上の運動を行う
  • 筋力トレーニングを取り入れる
  • HbA1c 7.0%未満を目標にする
  • 定期的に血糖値を確認する

糖尿病は生活習慣の改善によって予防・進行抑制が可能な病気です。食事・運動・薬物療法を適切に組み合わせながら、長期的な健康管理を行いましょう。


第3章-6 虚血性心疾患とリハビリテーション|原因・予防・運動療法をわかりやすく解説

虚血性心疾患は、心臓の筋肉(心筋)に十分な酸素や栄養が供給されなくなることで発症する病気です。代表的なものに狭心症と心筋梗塞があり、日本人の主要な死亡原因の一つとなっています。近年では治療技術の進歩により救命率が向上していますが、再発予防や生活の質(QOL)の向上のために心臓リハビリテーションが重要視されています。


虚血性心疾患とは

心筋に酸素が足りなくなる病気

心臓は絶えず拍動し続けるため、多くの酸素を必要とします。

しかし、

  • 冠動脈の狭窄
  • 冠動脈の閉塞
  • 冠動脈のけいれん(攣縮)

などによって酸素供給が不足すると、心筋虚血が生じます。


日本における現状

2021年の死亡原因では、

  • 心疾患:約21万人
  • 脳血管疾患:約10万人

となっており、虚血性心疾患は依然として重要な健康問題です。


虚血性心疾患の発症メカニズム

心筋の酸素需要と酸素供給のバランスが崩れると虚血が起こります。

酸素需要を増やす要因

  • 心拍数増加
  • 血圧上昇
  • 心筋収縮力増加

酸素供給を減らす要因

  • 冠動脈狭窄
  • 冠動脈閉塞
  • 冠攣縮

これらが重なることで狭心症や心筋梗塞が発症します。


最大の原因は動脈硬化

虚血性心疾患の多くは冠動脈の動脈硬化によって起こります。

動脈硬化は、

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 喫煙
  • 肥満

などの危険因子が長期間作用することで進行します。


狭心症と心筋梗塞の違い

狭心症

冠動脈が狭くなり、一時的に血流が不足する状態です。

特徴

  • 胸痛
  • 胸部圧迫感
  • 数分で改善
  • ニトログリセリンが有効

労作性狭心症

運動や階段昇降時に発症

安静時狭心症

安静時に発症

冠攣縮性狭心症

冠動脈のけいれんによる発症

があります。


心筋梗塞

冠動脈が完全または高度に閉塞し、心筋が壊死する病気です。

特徴

  • 強い胸痛
  • 30分以上持続
  • 緊急治療が必要

発症後は不整脈や心不全を起こす危険があります。


虚血性心疾患の危険因子

修正可能な危険因子

喫煙

喫煙者は虚血性心疾患の発症リスクが高くなります。

禁煙後2〜4年で脳卒中や心疾患のリスクは大きく低下します。

高血圧

降圧により

  • 脳卒中リスク:約40%低下
  • 心筋梗塞リスク:約15%低下

が期待できます。

糖尿病

糖尿病患者では虚血性心疾患リスクが約2.6倍に増加します。

脂質異常症

特にLDLコレステロール高値は重要な危険因子です。

肥満

BMI25以上の肥満は独立した危険因子とされています。

ストレス

慢性的なストレスも発症リスクを高めます。

メタボリックシンドローム

高血圧・高血糖・脂質異常症が重なることでリスクはさらに増加します。


修正できない危険因子

  • 加齢
  • 男性
  • 家族歴

などがあります。


治療方法

薬物療法

主な薬剤

  • 抗血小板薬
  • β遮断薬
  • ACE阻害薬
  • ARB
  • スタチン

など

再発予防にも重要です。


カテーテル治療(PCI)

狭くなった冠動脈を広げる治療です。

  • バルーン拡張
  • ステント留置

が行われます。


冠動脈バイパス術(CABG)

重症例では外科手術が選択されます。


心臓リハビリテーションとは

心臓リハビリテーション(心リハ)とは、

心疾患患者の身体的・精神的・社会的状態の回復を図り、再発予防とQOL向上を目指す包括的プログラムです。


心臓リハビリテーションの効果

継続的な運動療法により、

  • 運動耐容能向上
  • 心不全症状の改善
  • 自律神経機能改善
  • 血管内皮機能改善
  • 炎症の抑制
  • LDL低下
  • HDL上昇
  • 再入院率低下
  • 生命予後改善

などが期待できます。


心臓リハビリテーションの対象

主な対象疾患

  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 心不全
  • 冠動脈バイパス術後
  • PCI後
  • 心臓弁膜症
  • 大動脈疾患
  • 末梢動脈疾患

などです。


運動療法の処方

運動処方は個別に作成されます。

基本原則は

FITT

  • Frequency(頻度)
  • Intensity(強度)
  • Time(時間)
  • Type(種類)

です。


推奨される有酸素運動

  • ウォーキング
  • サイクリング
  • 水中運動

など

強度

  • 自覚的運動強度(Borg指数)12〜13
  • 「ややきつい」と感じる程度

頻度

  • 週5日以上

時間

  • 30〜60分

が一般的です。


レジスタンス運動

筋力低下予防のため、

  • ゴムバンド
  • 軽負荷マシン
  • 自重運動

などが併用されます。


運動療法の禁忌

以下の場合は運動療法を行いません。

  • 不安定狭心症
  • 急性心筋梗塞急性期
  • 重症心不全
  • 重篤な不整脈
  • 重症弁膜症
  • 急性心筋炎
  • 急性感染症

などです。


心臓リハビリテーションの流れ

急性期

入院直後

  • 離床訓練
  • 基本動作訓練

回復期

退院前後

  • 運動療法
  • 食事指導
  • 危険因子管理

維持期

社会復帰後

  • 運動習慣の維持
  • 再発予防
  • 生活習慣改善

を継続します。


健康運動指導士の役割

心疾患患者では運動療法を継続することが重要です。

健康運動指導士には、

  • 安全な運動指導
  • 身体活動量の向上支援
  • 生活習慣改善支援
  • 再発予防教育

などの役割が期待されています。


まとめ

虚血性心疾患は動脈硬化を背景として発症する代表的な循環器疾患です。

予防・再発予防のポイント

  • 禁煙する
  • 血圧を管理する
  • 糖尿病を改善する
  • LDLコレステロールを下げる
  • 適正体重を維持する
  • 有酸素運動を継続する
  • 心臓リハビリテーションに参加する

心臓リハビリテーションは単なる運動療法ではなく、再発予防と健康寿命延伸を目的とした包括的な治療プログラムであり、虚血性心疾患患者の予後改善に大きく貢献しています。


第3章-7 ロコモティブシンドロームとは?原因・判定方法・予防運動をわかりやすく解説

ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、骨・関節・筋肉・神経などの運動器の障害によって移動機能が低下し、将来的に要介護となるリスクが高まった状態を指します。超高齢社会を迎えた日本では、健康寿命延伸のために重要な概念として注目されています。

本記事では、ロコモティブシンドロームの定義、原因疾患、判定方法、予防のための運動について解説します。


ロコモティブシンドロームとは

ロコモティブシンドローム(Locomotive Syndrome)は、

運動器の障害によって移動機能が低下し、介護が必要となる危険性が高い状態

を指します。

2007年に日本整形外科学会が提唱し、2013年には現在の定義へ改訂されました。


なぜロコモが重要なのか

日本では高齢化が進み、要介護者が増加しています。

要介護となる原因を見ると、

  • 認知症
  • 脳血管疾患
  • 高齢による衰弱

と並び、

運動器障害が約25%を占める重要な原因

となっています。

つまり、ロコモ予防は介護予防そのものにつながるのです。


ロコモの構成概念

ロコモは単一の病気ではありません。

加齢に伴う

  • 骨の障害
  • 関節の障害
  • 筋肉の障害
  • 神経の障害

が複合的に影響して発症します。

運動器障害が進行すると、

  • 歩行能力低下
  • バランス能力低下
  • 移動能力低下

が起こり、

最終的には

  • 日常生活活動制限
  • 社会参加制限
  • 要介護状態

へ進行します。


ロコモの原因となる主な疾患

ロコモの背景には運動器の代表的な疾患があります。

骨粗鬆症

骨量が減少し骨折しやすくなる病気です。

転倒による骨折が要介護のきっかけとなります。


変形性膝関節症

膝関節の軟骨がすり減り、

  • 膝痛
  • 歩行障害

を引き起こします。


変形性股関節症

股関節の変形によって

  • 痛み
  • 可動域制限

が生じます。


変形性脊椎症

脊椎の変性により腰痛や運動機能低下が起こります。


脊柱管狭窄症

神経が圧迫され、

  • 間欠性跛行
  • 下肢痛
  • しびれ

を生じます。


サルコペニア

加齢に伴う筋肉量・筋力の低下です。

ロコモの重要な原因の一つです。


ロコモの有病者数

推計では40歳以上で

  • 骨粗鬆症:約1,070万人
  • 変形性膝関節症:約2,530万人
  • 変形性股関節症:約120万人
  • 変形性脊椎症:約3,790万人
  • 腰部脊柱管狭窄症:約610万人
  • サルコペニア:約370万人

と報告されています。


ロコモの特徴

ロコモでは複数の疾患が重なっていることが少なくありません。

例えば、

  • 骨粗鬆症
  • 変形性膝関節症
  • 変形性脊椎症

が同時に存在することで移動能力はさらに低下します。


ロコモの判定方法

日本整形外科学会ではロコモ度テストを推奨しています。

構成は次の3つです。


① 立ち上がりテスト

脚筋力を評価します。

高さ

  • 40cm
  • 30cm
  • 20cm
  • 10cm

の台から立ち上がれるかを確認します。


② 2ステップテスト

歩幅と移動能力を評価します。

測定方法

  • 最大歩幅で2歩進む
  • 移動距離を身長で割る

計算式

2ステップ値=\frac{2歩の距離(cm)}{身長(cm)}

値が低いほど移動能力低下を示します。


③ ロコモ25

25項目の質問票です。

評価内容

  • 痛み
  • 日常生活
  • 社会参加
  • 不安

などを確認します。


ロコモ度分類

ロコモ度1

移動機能低下が始まっている段階

判定例

  • 2ステップ値 1.3未満
  • 片脚立ち上がり40cm不可
  • ロコモ25が7点以上

ロコモ度2

移動機能低下が進行している段階

判定例

  • 2ステップ値 1.1未満
  • 両脚20cm立ち上がり不可
  • ロコモ25が16点以上

ロコモ度3

社会参加に支障をきたし始めた段階

判定例

  • 2ステップ値 0.9未満
  • 両脚30cm立ち上がり不可
  • ロコモ25が24点以上

です。


ロコモ・サルコペニア・フレイルの関係

これらは密接に関連しています。

サルコペニア

筋肉量・筋力の低下

フレイル

身体的・精神心理的・社会的な脆弱状態

ロコモ

運動器障害による移動機能低下

ロコモはフレイルの身体的側面と重なる部分が大きいとされています。


ロコモ予防の基本

ロコモ予防では、

  • 関節可動域維持
  • バランス能力向上
  • 筋力向上

が重要です。


ロコトレ(ロコモーショントレーニング)

日本整形外科学会が推奨する運動です。


片脚立ち

バランス能力向上を目的とします。

方法

  • 左右1分ずつ
  • 1日3回

転倒防止のため机や椅子の近くで実施します。


スクワット

下肢筋力向上を目的とします。

方法

  • 足を肩幅程度に開く
  • 膝がつま先より前に出ないようにする
  • 深呼吸しながら行う

目安

  • 5~6回を1セット
  • 1日3回程度

です。


健康運動指導士の役割

健康運動指導士には、

  • ロコモ評価
  • 安全な運動指導
  • 転倒予防支援
  • 身体活動量向上支援

などが求められます。

高齢者の健康寿命延伸において重要な役割を担っています。


まとめ

ロコモティブシンドロームは、運動器の障害によって移動機能が低下し、要介護リスクが高まった状態です。

ロコモ予防のポイント

  • 骨・関節・筋肉の健康を維持する
  • ロコモ度テストで早期発見する
  • 片脚立ちを習慣化する
  • スクワットで下肢筋力を維持する
  • 日常的に歩く習慣を持つ
  • フレイルやサルコペニアも予防する

ロコモティブシンドロームは早期発見と継続的な運動によって予防・改善が可能です。健康寿命を延ばし、いつまでも自立した生活を送るために、日頃から運動習慣を身につけましょう。


第3章-8 運動器退行性疾患とは?変形性関節症・骨粗鬆症・運動療法をわかりやすく解説

運動器退行性疾患とは、加齢に伴って骨・関節・脊椎などの機能が低下し、日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼす疾患群です。高齢社会が進む日本では、健康寿命延伸のために予防と適切な運動指導が重要となっています。

本記事では、代表的な運動器退行性疾患である変形性関節症、変形性脊椎症、骨粗鬆症について解説します。


運動器退行性疾患とは

運動器退行性疾患には主に、

  • 変形性膝関節症
  • 変形性股関節症
  • 変形性脊椎症
  • 骨粗鬆症

などがあります。

これらの疾患は、

  • 歩行能力低下
  • ADL低下
  • QOL低下
  • ロコモティブシンドローム

の大きな原因となります。


変形性関節症とは

関節軟骨がすり減る病気

変形性関節症(OA:Osteoarthritis)は、

関節軟骨の変性や摩耗によって関節に痛みや変形が生じる疾患です。


主な症状

初期

  • 動き始めの痛み
  • 違和感
  • 軽いこわばり

進行期

  • 歩行時痛
  • 関節変形
  • 可動域制限
  • 日常生活動作の低下

がみられます。


変形性膝関節症

日本人に最も多い変形性関節症です。

膝関節軟骨の変性により、

  • 膝痛
  • 階段昇降困難
  • 正座困難
  • 歩行障害

などが生じます。


有病率

推定有病者数は

  • 男性:約860万人
  • 女性:約1,670万人

合計約2,530万人

と報告されています。

女性に多く、年齢とともに増加します。


変形性股関節症

股関節軟骨の変性によって起こる疾患です。

症状

  • 股関節痛
  • 可動域制限
  • 歩行障害

などがあります。


有病者数

推定約120万人とされています。


変形性脊椎症

加齢による脊椎の変化

椎間板や椎間関節の変性によって起こります。

症状

  • 腰痛
  • 背部痛
  • 姿勢変化
  • 神経症状

などです。


有病者数

推定約3,790万人とされ、運動器疾患の中でも非常に多い疾患です。


運動器退行性疾患の危険因子

共通する危険因子

加齢

最大の危険因子です。

女性

変形性膝関節症や骨粗鬆症で高頻度です。

肥満

関節への負担を増大させます。

外傷歴

過去の関節損傷が発症リスクを高めます。

重労働

重量物運搬や長時間立位など

筋力低下

関節安定性低下につながります。


骨粗鬆症とは

骨粗鬆症は、

骨量や骨質の低下によって骨強度が低下し、骨折しやすくなった状態

です。


骨粗鬆症で問題となる骨折

代表的な骨折部位

  • 大腿骨近位部骨折
  • 椎体骨折
  • 橈骨遠位端骨折

です。

高齢者では要介護の大きな原因になります。


骨粗鬆症の有病率

40歳以上では

腰椎

  • 男性:3.4%
  • 女性:19.2%

大腿骨近位部

  • 男性:12.4%
  • 女性:26.5%

と女性で高率です。


骨粗鬆症の危険因子

主な危険因子

  • 加齢
  • 女性
  • 低骨密度
  • 骨折既往
  • 喫煙
  • 過度の飲酒
  • やせ
  • 運動不足
  • カルシウム不足

などです。


骨粗鬆症の治療

食事療法

積極的に摂取したい栄養素

  • カルシウム
  • ビタミンD
  • ビタミンK
  • たんぱく質

です。


薬物療法

主な薬剤

  • ビスホスホネート製剤
  • 活性型ビタミンD製剤
  • 抗RANKL抗体

などがあります。


変形性関節症の運動療法

運動療法は世界的なガイドラインでも強く推奨されています。

期待される効果

  • 疼痛軽減
  • 身体機能改善
  • ADL向上
  • QOL向上

です。


推奨される運動

筋力トレーニング

  • 大腿四頭筋訓練
  • ハムストリングス訓練

有酸素運動

  • ウォーキング
  • 自転車運動
  • 水中運動

ストレッチ

関節可動域維持を目的とします。


骨粗鬆症の運動療法

骨粗鬆症では、

荷重運動

  • ウォーキング
  • 階段昇降

筋力トレーニング

  • スクワット
  • 下肢筋力強化

バランス運動

  • 片脚立ち
  • バランス練習

が推奨されます。


転倒予防の重要性

骨粗鬆症では骨折予防が最も重要です。

そのため、

  • 下肢筋力向上
  • バランス能力向上
  • 住環境整備

など転倒予防対策が必要になります。


運動指導時の注意点

変形性関節症

  • 痛みを悪化させない
  • 関節への過負荷を避ける
  • 徐々に運動量を増やす

骨粗鬆症

  • 転倒リスクに注意
  • 急激な体幹屈曲を避ける
  • 骨折リスクを考慮する

ことが重要です。


健康運動指導士の役割

健康運動指導士には、

  • 病態理解
  • 安全な運動処方
  • 転倒予防指導
  • 運動継続支援

が求められます。

高齢者の健康寿命延伸に大きく貢献する役割を担っています。


まとめ

運動器退行性疾患は高齢者のADL低下や要介護化の重要な原因です。

予防・改善のポイント

  • 適正体重を維持する
  • 定期的な運動を行う
  • 筋力トレーニングを継続する
  • バランス能力を高める
  • 骨粗鬆症対策を行う
  • 転倒を予防する

運動器退行性疾患は加齢に伴って増加しますが、適切な運動習慣と生活習慣によって進行を遅らせることが可能です。健康寿命を延ばすためにも、早い段階から運動器の健康づくりに取り組みましょう。


第3章-9 呼吸器疾患(COPD・運動誘発性喘息)とは?病態・運動療法・注意点をわかりやすく解説

呼吸器疾患は、呼吸機能の低下によって日常生活や運動能力に大きな影響を及ぼす疾患です。健康運動指導士が関わる機会の多い呼吸器疾患として、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と運動誘発性喘息(EIA)があります。適切な運動療法は症状改善やQOL向上に有効ですが、安全に実施するためには病態の理解が欠かせません。


COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは

COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)は、主に喫煙によって引き起こされる進行性の呼吸器疾患です。

長期間にわたる有害物質の吸入によって、

  • 気道の慢性炎症
  • 気流閉塞
  • 肺胞破壊(肺気腫)

が生じます。


COPDの主な症状

初期は自覚症状が少ないこともありますが、進行すると次のような症状が現れます。

呼吸器症状

  • 労作時の息切れ
  • 慢性的な咳
  • 痰の増加
  • 呼吸困難

身体機能への影響

  • 歩行能力低下
  • 運動耐容能低下
  • 日常生活動作(ADL)の低下

などがみられます。


COPDの患者数

NICE Studyによると、

40歳以上の日本人の約8.6%(約530万人)

がCOPDに罹患していると推定されています。

しかし実際に診断されている患者数はその一部であり、潜在患者が多い疾患として知られています。


COPDの診断

診断にはスパイロメトリー検査を用います。

気管支拡張薬吸入後の

  • FEV₁(1秒量)
  • FVC(努力肺活量)

を測定します。

診断基準

FEV_1/FVC<70%

この基準を満たすとCOPDと診断されます。


COPDの重症度分類

気流閉塞の程度によって分類されます。

Ⅰ期(軽度)

  • FEV₁ 80%以上

Ⅱ期(中等度)

  • FEV₁ 50~80%未満

Ⅲ期(高度)

  • FEV₁ 30~50%未満

Ⅳ期(きわめて高度)

  • FEV₁ 30%未満

となります。


COPDが進行する仕組み

COPDでは呼気時に気道が狭くなり、

肺に空気が閉じ込められる

エアトラッピング(air trapping)

が起こります。

その結果、

  • 呼吸仕事量増加
  • 息切れ増加
  • 運動能力低下

につながります。


禁煙が最も重要な治療

COPD治療で最も重要なのは禁煙です。

喫煙を続けると肺機能は急速に低下しますが、

禁煙によって肺機能低下速度を遅らせることができます。


COPDの治療

非薬物療法

  • 禁煙
  • ワクチン接種
  • 呼吸リハビリテーション
  • 栄養療法
  • 運動療法

薬物療法

  • 気管支拡張薬
  • 吸入ステロイド
  • 長時間作用型β₂刺激薬
  • 長時間作用型抗コリン薬

などが用いられます。


COPDにおける呼吸リハビリテーション

呼吸リハビリテーションは、

  • 息切れ軽減
  • 運動能力向上
  • ADL改善
  • QOL向上

を目的として行われます。


COPDの運動療法

運動療法の効果

運動療法により、

  • 呼吸困難感の軽減
  • 運動耐容能向上
  • 身体活動量増加
  • QOL向上

が期待できます。


適応となる患者

以下を満たす患者が対象です。

  • COPDと診断されている
  • 病状が安定している
  • 運動による重篤な危険がない
  • 本人に運動意欲がある

などです。


COPDの運動プログラム

コンディショニング

呼吸トレーニング

特に有名なのが

口すぼめ呼吸

です。

方法

  • 鼻から吸う
  • 口をすぼめてゆっくり吐く

効果

  • 呼気時間延長
  • 気道虚脱防止
  • 息切れ軽減

が期待できます。


ADLトレーニング

日常生活動作を安全に行うための訓練です。

指導内容

  • 動作をゆっくり行う
  • 呼吸と動作を合わせる
  • 疲労時は休憩する
  • 無駄な動作を減らす

などです。


全身持久力トレーニング

代表例

  • 歩行
  • 自転車エルゴメーター
  • 階段昇降

など

COPD運動療法の中心となります。


筋力トレーニング

特に下肢筋力トレーニングが重要です。

  • スクワット
  • レッグエクステンション
  • 椅子立ち上がり運動

などがあります。


運動中のモニタリング

運動中は次の項目を確認します。

  • 呼吸困難感
  • 心拍数
  • 血圧
  • 呼吸数
  • SpO₂(経皮的酸素飽和度)

などです。


運動中止基準

以下の場合は運動を中止します。

  • 強い呼吸困難
  • 胸痛
  • 動悸
  • めまい
  • 著しい疲労
  • SpO₂ 90%未満

などです。


運動誘発性喘息(EIA)とは

運動後に一過性の気道収縮が起こり、

  • 喘鳴(ゼーゼー)
  • 呼吸困難

が出現する状態です。

運動終了後数分以内に症状が現れ、通常60分以内に改善します。


運動誘発性喘息が起こる理由

主な要因

  • 冷たく乾燥した空気
  • 気道からの水分蒸発
  • 気道炎症
  • アレルギー反応

などです。


発症しやすい運動

比較的発症しやすい運動

  • ランニング
  • 長距離走
  • 持久系運動

発症しにくい運動

  • 水泳
  • 間欠的運動

とされています。


運動誘発性喘息の予防

十分なウォーミングアップ

急な運動開始を避けます。


マスクの着用

冷たい空気の吸入を防ぎます。


薬物療法

運動前に

  • 吸入β₂刺激薬
  • ロイコトリエン受容体拮抗薬

などを使用することがあります。


健康運動指導士の役割

健康運動指導士には、

  • COPD患者の安全な運動指導
  • 呼吸状態の観察
  • 呼吸リハビリテーション支援
  • 運動誘発性喘息の予防指導

が求められます。


まとめ

COPDと運動誘発性喘息は、運動指導現場で遭遇する代表的な呼吸器疾患です。

COPDのポイント

  • 主な原因は喫煙
  • 労作時息切れが特徴
  • 禁煙が最重要
  • 呼吸リハビリテーションが有効
  • 口すぼめ呼吸を活用する

運動誘発性喘息のポイント

  • 運動後に一時的な気道収縮が起こる
  • 十分なウォーミングアップが重要
  • 冷たく乾燥した空気に注意
  • 必要に応じて薬物療法を行う

適切な運動指導は呼吸機能の維持・改善だけでなく、生活の質向上や健康寿命延伸にも大きく貢献します。


第3章-10 がん(悪性新生物)とは?予防・検診・運動の重要性をわかりやすく解説

がん(悪性新生物)は日本人の死亡原因の第1位であり、生涯で約2人に1人ががんに罹患すると推計されています。しかし近年は、予防・早期発見・治療技術の進歩により、生存率は大きく向上しています。健康運動指導士には、がん予防やがん患者への適切な運動指導に関する知識が求められています。


がん(悪性新生物)とは

がんとは、遺伝子異常によって細胞が無制限に増殖する病気です。

正常細胞では細胞増殖が厳密に制御されていますが、遺伝子異常が蓄積すると制御不能な増殖が起こります。

がんの特徴

  • 無制限に増殖する
  • 周囲組織へ浸潤する
  • 転移する
  • 再発する

などがあります。


がんの原因

がんは遺伝だけでなく、生活習慣や環境要因が大きく関与します。

過去の研究では、がん死亡への寄与として

  • 食生活
  • 喫煙
  • 感染症
  • 飲酒
  • 肥満
  • 身体活動不足

などが挙げられています。


日本人に多いがん

男性

罹患数が多いがん

  • 前立腺がん
  • 大腸がん
  • 肺がん
  • 胃がん

死亡数が多いがん

  • 肺がん
  • 大腸がん
  • 胃がん

です。


女性

罹患数が多いがん

  • 乳がん
  • 大腸がん
  • 子宮がん
  • 肺がん

死亡数が多いがん

  • 大腸がん
  • 肺がん
  • 胃がん

などとなっています。


日本のがんの現状

現在、日本人の約2人に1人が生涯でがんに罹患すると推計されています。

また、

  • がんは死亡原因第1位
  • 全死亡の約3割を占める

重要な健康課題です。

一方で、年齢調整死亡率は低下傾向にあり、治療成績の向上や早期発見の効果が示されています。


日本のがん対策

がん対策基本法

2007年に施行されました。

基本理念

  • がん予防の推進
  • がん検診の充実
  • がん医療の均てん化
  • 研究推進
  • がん患者支援

などです。


がん対策推進基本計画

現在は第3期計画が進められており、

全体目標として

  • 科学的根拠に基づく予防
  • がん医療の充実
  • がんとの共生

が掲げられています。


がん検診の目的

がん検診の目的は、

早期発見・早期治療によって死亡率を減少させること

です。

単にがんを見つけることではなく、

「がんによる死亡を減らす」

ことが重要な目的です。


主ながん検診

胃がん検診

対象

  • 50歳以上

方法

  • 胃部X線検査
  • 胃内視鏡検査

頻度

  • 2年に1回

肺がん検診

対象

  • 40歳以上

方法

  • 胸部X線検査
  • 喀痰細胞診(高危険群)

頻度

  • 年1回

大腸がん検診

対象

  • 40歳以上

方法

  • 便潜血検査

頻度

  • 年1回

乳がん検診

対象

  • 40歳以上女性

方法

  • マンモグラフィ

頻度

  • 2年に1回

子宮頸がん検診

対象

  • 20歳以上女性

方法

  • 細胞診

頻度

  • 2年に1回

です。


がん予防における運動の重要性

近年の研究では、

身体活動量が多い人ほどがんリスクが低い

ことが報告されています。

特に、

  • 結腸がん

では予防効果の科学的根拠が強いとされています。


がん予防のための生活習慣

国立がん研究センターが提唱する「日本人のためのがん予防法」では次の6項目が推奨されています。

① 禁煙

たばこを吸わない

② 節酒

飲酒は適量にする

③ 食生活改善

  • 塩分を控える
  • 野菜・果物を摂る
  • 熱い飲食物を控える

④ 身体活動

日常的によく動く

⑤ 適正体重維持

肥満・やせを防ぐ

⑥ 感染予防

  • 肝炎ウイルス
  • ピロリ菌

などへの対策

です。


がん予防のための運動目標

推奨される身体活動

  • 毎日60分程度の身体活動
  • 週1回以上の活発な運動

です。

  • ウォーキング
  • サイクリング
  • 水泳
  • ジョギング

など

継続できる運動が推奨されます。


がん患者(がんサバイバー)への運動の意義

治療成績の向上により、

がん治療後も長期間生活する

がんサバイバー

が増加しています。

しかし、

  • 疲労
  • 抑うつ
  • 体力低下
  • 筋力低下

などの問題を抱えることがあります。


がん患者への運動効果

研究では運動により、

  • 疲労軽減
  • 身体機能向上
  • QOL向上
  • 抑うつ改善
  • 再発リスク低下

が期待されています。


がんサバイバーへの運動ガイドライン

推奨内容

有酸素運動

  • 週150分以上の中等度運動

または

  • 週75分以上の高強度運動

筋力トレーニング

  • 週2回以上

が推奨されています。


がん患者の運動指導時の注意点

以下の状態では個別対応が必要です。

骨転移

  • 骨折リスクに注意

リンパ浮腫

  • 患肢への過負荷を避ける

高齢者

  • 転倒予防を重視

ストーマ保有者

  • 腹圧管理に注意

末梢神経障害

  • バランス能力低下に配慮

などがあります。


健康運動指導士の役割

健康運動指導士には、

  • がん予防のための運動指導
  • 身体活動促進
  • がんサバイバーへの安全な運動支援
  • QOL向上支援

などが求められています。


まとめ

がんは日本人の死亡原因第1位ですが、多くのがんは生活習慣改善によって予防できる可能性があります。

がん予防のポイント

  • 禁煙する
  • 節酒する
  • 野菜・果物を十分に摂る
  • 適正体重を維持する
  • 日常的に身体活動を行う
  • 定期的にがん検診を受ける

がん患者への運動のポイント

  • 疲労や体力低下を改善する
  • QOL向上につながる
  • 週150分以上の運動を目標とする
  • 病態に応じて安全に実施する

運動は、がん予防だけでなく、がん治療後の生活の質向上や健康寿命延伸にも大きく貢献する重要な生活習慣です。


第3章-11 軽度認知障害(MCI)・認知症とは?予防と運動の効果をわかりやすく解説

認知症は高齢化とともに増加する重要な健康課題です。一方で、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)の段階で適切な介入を行うことで、認知機能の維持や認知症への進行予防が期待できます。近年では、運動習慣が認知症予防に大きな役割を果たすことが明らかになっています。


認知症とは

認知症とは、

一度正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって低下し、日常生活に支障をきたす状態

を指します。

加齢とともに有病率は増加し、日本では高齢化に伴って患者数が急増しています。


日本における認知症の現状

厚生労働省研究班の推計では、

  • 認知症高齢者:約462万人
  • 認知症予備群(MCI):約400万人

とされており、合計で800万人を超える可能性が指摘されています。

今後さらに高齢化が進むことで、認知症対策の重要性はますます高まると考えられています。


主な認知症の種類

認知症の約7~8割を占めるのが次の2種類です。

アルツハイマー型認知症

最も多い認知症です。

特徴

  • 記憶障害から始まることが多い
  • ゆっくり進行する
  • アミロイドβの蓄積が関与

脳血管性認知症

脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって発症します。

危険因子

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 喫煙
  • 運動不足

などがあります。


認知症の危険因子

修正できない因子

  • 加齢
  • 遺伝的要因

修正可能な因子

  • 運動不足
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 肥満
  • 脂質異常症
  • 喫煙
  • 社会的孤立

などです。


認知活動と認知症予防

認知的な活動を行う人ほど認知症発症リスクが低いことが報告されています。

  • 読書
  • チェス
  • トランプ
  • 楽器演奏
  • ダンス

などです。

研究では、こうした活動を積極的に行う人はアルツハイマー型認知症の発症リスクが低下することが示されています。


社会参加も重要

認知症予防には人との交流も重要です。

例えば、

  • 配偶者との同居
  • 友人との交流
  • 地域活動への参加

などが認知機能維持に役立つと考えられています。


軽度認知障害(MCI)とは

MCI(Mild Cognitive Impairment)は、

認知症ではないが、正常とも言えない軽度の認知機能低下状態

です。

認知症と正常な加齢変化の中間段階と考えられています。


MCIの診断基準

主な基準

① 認知症ではない

日常生活はほぼ自立している

② 本人または家族が認知機能低下を自覚している

③ 客観的に認知機能低下が認められる

④ 日常生活動作は保たれている

という状態です。


MCIは回復する可能性がある

MCIは必ず認知症へ進行するわけではありません。

研究では、

  • 正常に回復する人
  • MCIのまま維持される人
  • 認知症へ進行する人

が存在することが示されています。

そのためMCIは非常に重要な介入時期とされています。


運動と認知症予防

近年、多くの研究で

身体活動量が多い人ほど認知症リスクが低い

ことが報告されています。


運動習慣の効果

大規模研究では、

週3回以上の運動を行う人は、

運動習慣のない人と比較して

  • 認知機能低下
  • アルツハイマー型認知症

のリスクが低いことが示されています。


運動が脳に良い理由

運動によって

  • 脳血流増加
  • 神経成長因子増加
  • 神経細胞保護
  • 神経可塑性向上

が起こると考えられています。

さらに有酸素運動によって、

  • 海馬機能改善
  • 記憶力改善

が期待されています。


MCI高齢者への運動介入

研究では、

MCI高齢者に対して

  • 有酸素運動
  • 筋力トレーニング
  • ストレッチ

を組み合わせた運動プログラムを実施すると、

認知機能や記憶機能の改善が認められています。


認知症予防プログラム

地域で実施される認知症予防プログラムでは、

有酸素運動

  • ウォーキング
  • 体操
  • ダンス

認知課題

  • 計算
  • 記憶課題
  • ゲーム

社会交流

  • グループ活動
  • 地域活動

などを組み合わせて行います。


システマティックレビューによる結論

近年のシステマティックレビューでは、

身体活動(PA:Physical Activity)は

  • 認知機能低下予防
  • MCI予防
  • 認知症予防

に有効である可能性が高いとされています。

特に有酸素運動を中心とした継続的な身体活動が推奨されています。


推奨される運動

認知症予防のためには、

有酸素運動

  • ウォーキング
  • サイクリング
  • 水泳
  • 軽いジョギング

レジスタンス運動

  • スクワット
  • 椅子立ち上がり運動
  • ゴムバンド運動

バランス運動

  • 片脚立ち
  • バランス練習

などを組み合わせることが望ましいとされています。


健康運動指導士の役割

健康運動指導士には、

  • MCIの早期発見支援
  • 安全な運動指導
  • 認知症予防プログラム運営
  • 社会参加支援
  • 運動継続支援

などが求められます。


まとめ

認知症は高齢化とともに増加していますが、認知症予防や進行抑制において運動が重要な役割を果たします。

認知症予防のポイント

  • 適度な運動習慣を持つ
  • 読書やゲームなど認知活動を行う
  • 社会参加を継続する
  • 高血圧や糖尿病を管理する
  • MCIの段階で早期介入する

運動のポイント

  • ウォーキングなどの有酸素運動を継続する
  • 筋力トレーニングを併用する
  • グループ活動や地域活動に参加する
  • 楽しみながら継続する

認知症予防において最も重要なのは、運動・知的活動・社会参加を日常生活の中で継続することです。健康運動指導士は、その実践を支援する重要な役割を担っています。


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