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フィットネスクラブ・マネジメント(ベーシック)試験対策はスキマ時間で基礎学習【重要語句】

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健康運動指導士資格試験研究会(フィットネスクラブ・マネジメント資格研究部)です。

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それでは、合格に向けた学習を始めましょう!

目次

第1章 フィットネス産業

【フィットネス産業の定義と分類】

フィットネス産業は、2002年に改訂された日本標準産業分類では「生活関連サービス業、娯楽業」の中分類、「娯楽業」の小分類「スポーツ施設提供業」に位置し、「室内プール、トレーニングジム、スタジオなどの運動施設を有し、会員に提供する事業所」と定義されている。

しかし、実際には以下のような様々な視点で捉えることができる:

・「サービス業」「ホスピタリティ産業」「習慣化サポート業」

・「モチベーション産業」「エデュテインメント産業」「エクスペリエンス(体験)産業」

フィットネス産業の本質は、変化に対応しながら、顧客(顧客課題)=ソリューション(解決策)のフィット(整合)を作り出すことにある。

【フィットネス産業の現状】

2020年のコロナ禍による影響で市場規模は3,196億円(前年比▲35.3%)、会員数425万人(同▲23.4%)、参加率3.38%まで落ち込んだが、その後回復基調にあり、2023年には市場規模約4,900億円、クラブ数7,780軒、会員数557万人、参加率4.48%となった。

日本のフィットネス参加率は先進国(米国23.7%、英国15.1%など)と比較して低いが、これは潜在需要があることを示している。

【フィットネスクラブの種類】

ポジショニングマップでは4つの類型に分けられる:

  1. 顧客体験型(ブティックスタジオ):運動強度高、情緒性高
  2. 成果型(機能改善・ボディメイク):運動強度高、機能性高
  3. 利便型(24Hセルフサービス型ジム):運動強度弱、機能性高
  4. 調整型(マインド&ボディ、ヨガ、ストレッチ):運動強度弱、情緒性高

近年は小規模な専門型施設が増加している。

【フィットネス産業の使命】

フィットネス産業の使命は、「世界をよりよい場所にすること」「健康で幸せな人生を送る人々を増やすこと」と広く捉えることができる。

フィットネスのベネフィット(便益)は多様であり、セルフエフィカシー(自己効力感)の向上、ストレス解消、免疫力向上、体力増進、達成感、自己実現、認知機能の維持など多岐にわたる。

コロナ禍は、フィットネスが「生活必需品」であることを再認識させた。国民の健康維持には多大な国費が必要になるが、フィットネスクラブの普及により医療費・介護費のGDPに占める割合を抑えることが可能になる。

【フィットネス産業の歴史】

■黎明期(1960〜1970年代)

1964年の東京オリンピック後に水泳の選手や指導者による「スイミング指導」が始まり。1969年にセントラルスポーツが設立。1970年代にはスポーツブームが起こり、ジョギングブーム、ジャズダンスブームなどが続いた。

■成長期(1980年代前半)

1981年にケネス・クーパー氏来日、”エアロビクス”という言葉が広がる。1983年、日本で初めて「フィットネスクラブ」の名を冠したセントラルスポーツの「ウィルセントラルフィットネスクラブ新橋」がオープン。「入会金1万円・月会費1万円・利用料なし」という現在のクラブ料金システムの原型ができた。

■発展期(1980年代後半)

バブル経済により年間200軒を超える総合型フィットネスクラブがオープン。土地オーナーの事情も大きく影響。

■調整期(1990年代前半)

積極拡大の反動と景気後退で新規出店が減少。ルネサンスはローコスト建築と設備費削減で経営の効率化を図った。

■復調期(1990年代後半)

ピープルが月会費の見直しに着手。施設規模に合わせた料金設定、多様な会員種別を導入し収益性を改善。

■再編期(2000〜2001年)

セントラルスポーツの株式公開、ルネサンスとトリムの合併など業界再編が活発化。IT不況などで市場環境は悪化。

■再調整期(2001〜2002年)

既存店舗のリノベーションやカウンセリング強化、新規入会者の永久制度導入などを実施。

■再復調期(2003〜2006年) 市場は回復傾向に。女性専用小規模サーキットトレーニングジムのカーブスが急速に店舗数を伸ばし、日本のフィットネス参加率向上に貢献。2006年に市場規模は4,072億円を記録。

■第三次調整期(2007〜2019年)

景気低迷と消費の選択肢拡大、ライフスタイルの変化などにより、会員数減少と利益減少。しかし、2011年頃から徐々に回復し、2019年に5,000億円規模に。

■2020年〜現在

コロナ禍で「スポーツジムはクラスター源」との発言により風評被害を受け、休業・営業時間短縮を余儀なくされた。しかし、フィットネスクラブは「不要不急ではなく、日常生活に必要不可欠な施設」という価値が再認識された。

【顧客の特性】

■参加状況 運動習慣のある者(週2回以上、1回30分以上、1年以上継続)の割合は男性33.4%、女性25.1%。年齢階級別では男性40代、女性30代が最も低い。

■会員構成 50歳以上の会員比率が約6割と上昇している一方、20代・30代の会員比率が下降。女性の方が多い構成になっている。平均年齢は50歳前後。

■入会時の期待 トップは「運動不足解消・運動機会確保」、次いで「健康維持・増進」「筋力アップ・体力維持向上」「ダイエット・体型維持改善」の順。

■入会決定要因 「料金」「立地/アクセス」が上位。次いで「営業時間」「施設の雰囲気や清潔感」が続く。

■退会要因 「時間がない、忙しいため」(30.4%)、「転居・転勤のため」(16.8%)、「通うことが負担・面倒になったため」(11%)、「ライフスタイルが変化したため」(10.8%)の順。

■継続理由 「時間があること」が最も影響が大きい。「利用パターンが確立していること」「クラブが立地の良い場所にあること」「スタッフの指導態度の良さ」「運動効果の実感が得られること」も重要。

【フィットネス業界の今後の取り組み】

  1. 顧客が動機(興味)をもつサービスでアプローチし、運動の習慣化をサポート
    • 2ステップ、3ステップで本格的に習慣づけていく
    • 例:サウナ、コワーキング、エステなど顧客が求めるサービスで入口を作る
  2. 最大限の衛生・安全対策の継続
    • 換気、清潔な環境維持、感染予防対策の徹底
  3. 会員へのサービスの最適化
    • エンゲージメントの高い顧客へより高い付加価値を提供
    • パーソナルトレーニング、リハビリ系プログラム、スモールグループトレーニングなど
  4. デジタルを活用したサービスデザイン
    • オンラインフィットネス、ウェアラブルテクノロジーの活用
    • CRMシステムによる顧客管理の強化
  5. 組織の団結とリーダーシップの強化
    • 現場スタッフを大切にし、顧客サービスの質を向上
    • 予防と準備を重視した強い組織づくり

【フィットネス産業のトレンド】

2024年に向けたフィットネストレンドTOP5:

  1. ウェアラブルテクノロジー
  2. 職場の健康増進
  3. 高齢者のためのフィットネスプログラム
  4. 減量エクササイズ
  5. 認定トレーナーへの払い戻し

フィットネス事業者は「カスタマーエフォートレス」から「カスタマーサクセス」「カスタマーエンゲージメント」へとシフトし、会員が段階的にフィットネスを生活に取り入れる「ウェルビーイング」をサポートすることが求められている。

【フィットネス施設の収支構造】

フィットネスクラブの収支は、単純化すると「会員数×客単価+付帯収入としての売上高から、経費を引いた残りが利益」となる。

主な経費構造:

  • 賃借料や水道光熱費などの設備費が約4割
  • 人件費が約4割
  • 販売促進費・広告宣伝費などが約2割

コロナ禍前は平均的に5〜10%程度の経常利益率だったが、コロナ禍から4年が経過した2024年の決算では、収益性を確保できている企業は少なく、完全回復していない状況。

【ジム選択時の重視項目】 利用者アンケートによると、ジム選択時に重視する項目は:

  1. 料金(48.9%)
  2. 立地/アクセス(25.0%)
  3. 施設の雰囲気や清潔感(6.0%)
  4. スタッフ/トレーナーの対応(4.6%)
  5. プログラム/レッスンの充実度(4.2%)

【フィットネス施設のマーケティング】

■マーケティングの定義(2024年改定)

「(マーケティングとは)顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである」

この定義の重要なポイントは、「市場創造」から「関係性」「価値創造」「社会課題の解決」「持続的成長」などへと重点がシフトしていること。フィットネスクラブは社会課題解決に貢献する存在として、持続的な成長を目指すことが求められている。

■マーケティングの全体像

マーケティング戦略策定プロセスは以下の3段階で構成される:

  1. 環境分析
    • マクロ環境の把握(PEST分析)
    • 業界環境の把握(5F分析)
    • 競争環境の把握(3C分析)
    • 強み/弱みの把握(VC分析)
    • 市場機会・事業課題の明確化(SWOT分析)
  2. 戦略立案
    • セグメンテーション(ターゲット候補群の抽出)
    • ターゲティング(ターゲット選定)
    • ポジショニング(アプローチの方向づけ)
  3. 施策立案
    • 4P戦略:Product(商品・サービス)、Price(価格)、Place(立地・チャネル)、Promotion(広告・販促)
    • 4C視点:Customer Solution(顧客ソリューション)、Customer Cost(顧客コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)

■マーケティングの実践ポイント

  1. 環境分析と戦略分析、特にセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングを何度も繰り返して最適化することが重要
  2. マーケティング戦略は実装してみて、対象顧客の期待やニーズ、課題とのフィット感を常に確認し改善を続けること
  3. フィットネスクラブのマーケティングでは、入会してからのプロセスも重要

■カスタマージャーニーとUX カスタマージャーニーは顧客体験の流れを可視化したもので、以下の6段階で考えることができる:

  1. 認知・興味:自宅・通勤中などでフィットネスクラブの情報に触れる
  2. 行動・比較:情報収集や検討を行う
  3. 入会:フィットネスクラブへの入会を決定
  4. 利用:施設の利用を開始
  5. 継続:定期的な利用と習慣化
  6. 退会:サービス終了

各段階でユーザーが抱える感情や課題を理解し、適切なタッチポイントでサポートすることが重要。

■会員定着促進のための10の取り組み

  1. 一番の優先順位は、ふさわしい人を雇用・維持する
  2. 一貫性のあるサービストレーニングをする
  3. 会員の名前を覚える、あいさつする、声をかける
  4. 会員の声にすぐに対応する
  5. 健康の大切さを伝えることとフィットネスを促進する
  6. 格別な清潔さを維持する
  7. 再投資できるように努力する
  8. 様々なアクティビティ(プログラムやイベント等)を提供し、メンバー間の関係構築を促進する
  9. 特に新メンバーがポジティブな体験ができるようにする
  10. 競争相手を念頭に入れて、相手を上回ることをする

【フィットネス産業の特徴のまとめ】

フィットネス産業は多様な側面から捉えられる:

  • 立地産業、施設(設備)産業、会員制ビジネス
  • コンテンツ(プログラム)提供事業、人材サービス(指導サービス)業

近年は総合業態中心から専門特化型の小規模施設への移行が進んでいる。会員制ビジネスとスクール会員制という2つの形態があり、それぞれ特徴が異なる。

フィットネス産業の本質は「顧客の課題や期待に応える価値を提供し、健康でいたいという思いをサポートすること」である。この価値を創造・提供し続けることで、国民の健康増進と社会貢献を実現できる産業といえる。

第2章 健康施策の概要と動向

【健康とは】

「WHO(世界保健機関)」は、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義している。

「健康産業」として提供価値は、「身体的な健康」の提供価値にとどまらず、笑顔や癒しなどの「心の健康」、さらには人と人とのコミュニケーションを通じた「社会的な健康」を生み出すことが事業の価値として求められている。

【WHOの健康に関する理念】

「世界中すべての人々が健康であることは、平和と安全を達成するための基礎であり、その成否は、個人と国家の全面的な協力が得られるかどうかにかかっている」

「1つの国で健康の増進と保護を達成することができれば、その国のみならず世界全体にとっても有意義なことである」

「健康増進や感染症対策の進み具合が国によって異なると、すべての国に共通して危険が及ぶことになる」

「各国政府には自国民の健康に対する責任があり、その責任を果たすためには、十分な健康対策と社会的施策を行わなければならない」

【世界と日本の健康課題】

「SDGs(持続可能な開発目標)」は、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標である。

「目標3:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」 ・3.2:新生児死亡率と5歳未満児死亡率の削減 ・3.3:感染症(エイズ、結核、マラリア、肝炎、水系感染症)の根絶 ・3.4:非感染性疾患による若年死亡率の3分の1削減 ・3.5:薬物乱用やアルコールの有害な摂取の防止・治療 ・3.6:交通事故による死傷者の半減

【日本国民の健康現状】

「最大の危機」は、少子高齢化と人口減少である。少子高齢化による人口減少と人口構造の変化は、日本社会の機能を破綻させることになる。

「国民皆保険制度」とは、すべての人が公的医療保険に加入し、全員が保険料を支払うことでお互いの負担を軽減する制度のことであり、この制度により誰もが医療機関へアクセスしやすい状況をつくりだしている。

【非感染性疾患(NCDs)】

「NCDs(Noncommunicable diseases)」とは、循環器疾患、がん、慢性呼吸器疾患、糖尿病などの「感染性ではない」疾患の総称であり、WHO(世界保健機関)では、不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒などの原因があり、生活習慣の改善により予防可能な疾患をまとめて「非感染性疾患(NCDs)」として位置づけている。

世界の死因の74%を占め、そのうちの77%が低中所得国において死亡者が発生している。日本においても、2020年時点で死因の82%がNCDsだという報告がある。

【生活習慣病と予防医療】

「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群、通称:メタボ)」は、内臓脂肪型肥満とそれに伴う複数の生活習慣病を合わせ持った状態で、2008年4月より特定健診と特定保健指導が開始された。

「特定健診(メタボ健診)」の診断基準:

・内臓脂肪型肥満:腹囲(ウエストサイズ)が男性85cm以上、女性90cm以上

・血圧値:収縮期血圧130mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上

・血糖値:空腹時血糖110mg/dL以上

・血清脂質:中性脂肪値150mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL未満

NCDsの代表的なものとしては、内臓脂肪型肥満に関連する高血圧症、糖尿病(II型糖尿病)、心臓病(虚血性心疾患)、脳卒中(動脈硬化)などがある。これらの疾患に対しては、適切な運動習慣が予防・改善に効果的であることが示されている。

「HbA1c(ヘモグロビン エーワンシー)」は、血液検査値で、過去1~2ヶ月間の血糖コントロールの状態を教えてくれる数値である。保健指導開始の判定値は5.6%以上、受診勧奨の判定値は6.5%以上である。

【健康日本21(国民の健康づくり対策)】

「健康日本21」は、国民の健康増進と生活の質向上を図るための基本方針として2000年から実施されている。

「第1次国民健康づくり対策」(1978年~):

国民一人ひとりが「自分の健康は自分で守る」という自覚を持つことが基本であり、行政としてはこれを支援するため、国民の多様な健康ニーズに対応しつつ、地域に密着した保健サービスを提供する体制を整備していく必要があるとの観点から、①生涯を通じる健康づくりの推進、②健康づくりの基盤整備、③健康づくりの普及啓発の3点を柱として取り組みを推進した。

「第2次国民健康づくり対策(アクティブ80ヘルスプラン)」(1988年~):

運動習慣の普及に重点を置き、栄養・運動・休養の全ての面で均衡のとれた健康的な生活習慣の確立を目指すこととし、取り組みを推進した。

「第3次国民健康づくり対策(21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21))」(2000年~):

壮年期死亡の減少、健康寿命の延伸および生活の質の向上を実現することを目的とし、生活習慣病やその原因となる生活習慣等の国民の保健医療対策上重要な課題について、10年後を目途とした目標等を設定し、国や地方公共団体等の行政だけでなく、関係団体等の積極的な参加および協力を得ながら、「一次予防」の観点を重視した情報提供等を行う取り組みを推進した。

「第4次国民健康づくり対策(健康日本21(第二次))」(2013年~):

少子高齢化や疾病構造の変化が進む中で、生活習慣および社会環境の改善を通じて、子どもから高齢者まですべての国民が共に支え合いながら希望や生きがいを持ち、ライフステージに応じて、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会を実現し、その結果、社会保障制度が持続可能なものとなるよう、国民の健康の総合的な推進を図るための基本的な事項を示し、健康づくりを推進している。

「第5次国民健康づくり対策(21世紀における第三次国民健康づくり運動(健康日本21(第三次))」(2024年~): 2035年度までの12年間として、健康寿命の延伸と健康格差の縮小をビジョンとし、①誰一人取り残さない健康づくりの展開(Inclusion)、②より実効性をもつ取組の推進(Implementation)を目指している。

【健康づくりのための栄養】

「栄養素」には、三大栄養素(糖質、脂質、たんぱく質)と微量栄養素(ビタミン、ミネラル)がある。

「糖質(炭水化物)」は最も使いやすいエネルギー源で、体内では1gあたり4kcalのエネルギー源となる。

「脂質」は1gあたり9kcalのエネルギーを発生させ、糖質やたんぱく質に比べて2倍以上のエネルギー源となる。

「たんぱく質」は多数のアミノ酸がペプチド結合して構成されている高分子化合物である。

「必須(不可欠)アミノ酸」(バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)と「非必須(可欠)アミノ酸」がある。

「ビタミン」は微量で生命維持にかかわる不可欠な有機物であり、「水溶性ビタミン」と「脂溶性ビタミン」に分けられる。

【高齢者の健康づくり】 「介護保険制度」とは、介護を必要とする高齢者の治療や介護、日常生活における支援サービスなどにかかる負担(費用、家族介助、福祉施設利用料等)を社会全体で支えるための保険制度をいう。

「介護予防」は、介護保険制度で「要支援1」あるいは「要支援2」と判断された介護度の人たちが、さらに介護度が上がっていくことを防ぐために、生活機能の向上と自立した生活の維持を目的とする。

「フレイル」とは、加齢に伴い身体機能や認知機能などの予備能力が低下し、要介護状態への進展が懸念される虚弱な状態のことである。

「フレイル健診」は、フィジカルフレイル(カラダの虚弱)、メンタルフレイル(ココロの虚弱)、ソーシャルフレイル(キズナの虚弱)、オーラルフレイル(口腔内の虚弱)など幅広いチェック項目がある。

「認知症」には、アルツハイマー病と脳血管性の大きく2つの型がある。運動は、脳の酸素供給能力を維持し、脳機能を保全することによって、健全な精神活動を営む基盤を築くことになり、認知症予防に効果的である。

【本章での学びのポイント】

・健康は単に疾病がないだけでなく、身体的・精神的

・社会的に満たされた状態である ・世界規模の健康課題(感染症・非感染性疾患)と日本の健康課題(少子高齢化・人口減少)

・生活習慣病(NCDs)の予防と対策の重要性

・健康日本21による段階的な健康施策の変遷と取り組み

・エネルギー摂取と消費のバランスを考慮した栄養管理の重要性

・高齢者の健康維持と介護予防における運動の役割

第3章 運動・トレーニングの基礎

運動の健康効果

【日常的な身体活動の効果】

  • 身体活動能力や姿勢・体型の改善
  • 死亡リスク、心血管系疾患、がんによる死亡リスクの低減
  • 生活習慣病の予防・改善
  • 健康寿命の延伸

【健康関連体力要素】

  • 健康増進に関連性の高い体力要素:心肺持久力、筋力、筋持久力、柔軟性、身体組成
  • 「健康関連体力」と総称される

運動生理学の基礎

1. 骨格筋の構造

【骨格筋の形態】

  • すべての運動・身体活動は骨格筋の収縮や伸張によって行われる
  • 骨格筋は筋組織、結合組織、神経、血管などからなる器官
  • 特有の階層構造を示す

【筋線維】

  • 細長い筋細胞の筋線維が力を発揮
  • 筋線維は筋内膜に覆われ、多数の筋線維が筋周膜に覆われて筋束を構成
  • 筋束が筋外膜に覆われ、一つの筋を形成
  • 腱は骨とつながり、骨格筋の力を骨に伝える

【筋線維タイプ】

  • 速筋線維(タイプII線維、FT線維、白筋):速い、力が大きい、有酸素代謝能力が低い、持久性能力が低い
  • 遅筋線維(タイプI線維):遅い、力が小さい、有酸素代謝能力が高い、持久性能力が高い

【筋活動様式】

  1. 静的な筋活動(アイソメトリック):等尺性
  2. 動的に筋力発揮(アイソトニック):等張性
  3. 一定の速度で筋力発揮(アイソキネティック):等速性
  • 一般的な動的レジスタンストレーニング:等張性筋活動
  • 等尺性筋活動での静的レジスタンストレーニング:アイソメトリックトレーニング
  • 等張性および等速性筋活動の特徴:
    • 短縮性筋活動(コンセントリック):筋が力を発揮しながら短縮
    • 伸張性筋活動(エキセントリック):逆に力を発揮しながら伸張
    • 伸張性筋活動は短縮性筋活動より大きな力を発揮可能
    • 等張性筋活動では発揮される速度が増加すると徐々に力が減少(力-速度関係)

2. 神経系と運動

【運動単位】

  • 骨格筋は中枢からの運動指令を筋線維に伝達する運動神経によって支配
  • 一つの運動神経には複数の筋線維が含まれ、「運動単位」と呼ぶ
  • 精密な動きが必要とされる眼の運動神経:約10本程度の筋線維
  • 大きな筋力発揮が必要な大筋群:2,000~3,000本の筋線維

【サイズの原理】

  • 通常、日常生活や低強度のトレーニングでは遅筋線維の運動単位から優先的に動員
  • 運動強度の増大とともに、速筋線維の運動単位が動員される

【トレーニングの適応】

  • レジスタンストレーニングによる長期的適応(トレーニング効果):
    • 神経系の適応
    • 筋線維サイズの変化(筋肥大)
    • 代謝的適応
    • 骨、腱、靭帯などの結合組織の強化
  • レジスタンストレーニング初期の筋力増大:神経系の適応が大きく寄与
  • その後に筋肥大が起こり筋力向上に寄与
  • 代謝的適応:無酸素性代謝に関連した酵素の合成が高まり、筋の無酸素代謝能力が向上

3. 内分泌と運動

【ホルモンとは】

  • 主に内分泌器官(腺)で合成・貯蔵・分泌され、血流で体内を循環
  • 微量で身体機能を調節・維持する物質
  • 「鍵と鍵穴」の関係:1種類の受容体は1種類のホルモンのみと結合

【ホルモンの作用】

  • 呼吸・循環・代謝系は自律神経系、ホルモン、代謝物質などにより複雑な調整
  • カテコールアミン(ノルアドレナリン、アドレナリン):
    • エネルギー代謝を活性化
    • 心収縮力や心拍数を増加
    • 血流量を増加
  • カテコールアミンの作用:
    • 肝臓でグリコーゲンの分解を高める
    • 脂肪細胞で中性脂肪の分解を促進
    • 運動時のエネルギー供給
  • 骨格筋への作用:
    • 成長ホルモン、インスリン、インスリン様成長因子-I、テストステロンなど
    • タンパク質合成を高める

4. 呼吸・循環系と運動

【心拍出量】

  • 運動により酸素とエネルギー源の需要が増加
  • 心臓から身体末梢へ送り出す血液量(心拍出量)が増加
  • 心拍出量 = 1回拍出量 × 心拍数
  • 1回拍出量:安静時70~80ml、運動時は110~120mlまで増加
  • 心拍数:運動強度に比例して増加、個人の最大心拍数まで増加
  • 運動時の心拍数測定:持久力トレーニング中の運動強度把握に有効
  • 安静時心拍数:60~80拍/分、最大心拍数は20歳代で200拍/分前後
  • 最大心拍数は個人差があり加齢とともに低下

【血液循環】

  • 身体には体重の約7~8%の血液が循環・貯蔵
  • 運動時の血流配分:
    • 心臓は安静時の4倍
    • 骨格筋では18倍程度まで血液量が増加
    • 腎臓や肝臓などでは血流量が低下
    • 活動する骨格筋へ優先的に血流を循環

【血圧】

  • 収縮期血圧(最高血圧):心室収縮時に血液が心臓から強く送り出されるときの動脈壁圧力
  • 拡張期血圧(最低血圧):心室が弛緩し血液を強く送り出さないときの動脈壁圧力
  • 血圧 = 心拍出量 × 総末梢血管抵抗
  • 有酸素性持久力トレーニング:心拍出量が増加、末梢血管抵抗が低下、収縮期血圧がやや増加、拡張期血圧はやや減少
  • レジスタンストレーニング:心拍出量は顕著に増加しないが、末梢血管抵抗が増加、収縮期・拡張期血圧がともに増加
  • 高血圧者や高齢者での注意点:怒責をともなうレジスタンストレーニングでは血圧上昇が著しい

【酸素摂取量】

  • 運動時の体内に取り込まれた酸素量:「酸素摂取量(VO₂)」
  • 酸素摂取量 = 心拍出量 × 動静脈酸素較差
  • 最大酸素摂取量(VO₂max):1分間当たりに摂取することができる酸素の最大量
  • 最大酸素摂取量:全身持久力の評価指標、健康との関連も明確

5. エネルギー代謝と運動

【生体のエネルギー代謝機構】

  • すべてのエネルギーはATP(アデノシン3リン酸)から得られる
  • ATPは非常に微量しか蓄積されていないため、3種類のエネルギー供給機構でADPをATPに再合成:
    1. ATP-CP系
    2. 解糖系
    3. 酸化系

【ATP-CP系】

  • 筋に蓄積されているクレアチンリン酸(CPまたはPCr)が分解する際のエネルギーでATPを再合成

【解糖系】

  • 筋中のグリコーゲンや血中のグルコースなどの糖質を分解する過程で得られるエネルギーでATP再合成
  • 乳酸系とも呼ばれる
  • 乳酸は筋や肝臓でピルビン酸に変換してエネルギーとして再利用

【酸化系】

  • 細胞内のミトコンドリア内で酸素を利用してATPを合成(有酸素系)
  • エネルギー源は糖質と脂質

【運動強度とエネルギー供給機構の変化】

  • 主に運動強度、運動時間、3種類のエネルギー産生能力、呼吸循環器系の能力、骨格筋の筋線維比率などの因子による
  • 運動強度と運動時間は反比例
  • 高強度・短時間の運動:ATP-CP系が中心
  • 中等度の運動強度:解糖系が中心
  • 低強度・長時間の運動:酸化系が中心

6. 運動時の水分・栄養補給

【水分補給】

  • トレーニング時の発汗により体内の水分と電解質を損失
  • 主な電解質(イオン):ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)
  • 体液の恒常性の維持機能や神経伝達、筋収縮などの役割
  • カルシウムイオンは筋収縮に利用されるため、発汗とともない損失が多いと筋疲労や筋痙攣の原因
  • 発汗により血液の粘性が増加すると、血圧上昇、虚血性心疾患、脳卒中のリスクが高まる
  • 高齢者には運動中・後の水分補給が重要
  • 発汗量と同程度を補給、脱水が著しいと体温上昇、熱疲労、パフォーマンス低下、熱中症のリスク
  • トレーニング前・後の体重測定:水分補給量の指標
  • 適切な栄養摂取が前提なら水で十分
  • 有酸素性持久力トレーニングなどの発汗量が多い運動の場合:ナトリウムや電解質を含む飲料を摂取
  • 糖質を含む飲料の摂取:運動中の筋グリコーゲン低下を抑え疲労を軽減

【糖質摂取とグリコーゲンの回復】

  • 筋グリコーゲンは筋活動のエネルギー源
  • トレーニング直後の糖質摂取:疲労回復を早期に達成
  • 摂取された糖質はグリコーゲンに再合成され、肝臓と筋肉に蓄えられる
  • 過剰摂取の糖質:脂肪組織の中性脂肪に変換
  • 長時間トレーニングで筋グリコーゲン枯渇:疲労感が強くなる
  • 肝臓のグリコーゲン減少:脳へのエネルギー不足、集中力低下
  • トレーニング後の早期糖質摂取:6~8時間後まで筋グリコーゲン貯蔵量が高まる
  • 一般的にトレーニング終了後30分以内の糖質摂取が推奨

【トレーニング後の栄養摂取】

  • グリコーゲン回復だけでなく、タンパク質分解にも影響
  • トレーニング後のタンパク質摂取:タンパク質合成速度を高め、筋肉づくりや筋損傷の早期修復、筋疲労の軽減
  • 高齢者では加齢によるタンパク質の合成速度低下、摂取量の減少
  • タンパク質の分解が高まり筋委縮が先進
  • サルコペニア(筋肉減少症)やフレイル(虚弱)予防のため、適切なタンパク質摂取とトレーニング後の早期タンパク質摂取が重要

トレーニングの基礎

1. 運動開始前の健康スクリーニング

【健康スクリーニングの重要性】

  • 定期的な運動・トレーニングは心身の健康に有益
  • 遺伝性や先天性の心血管系異常、心疾患、動脈硬化性疾患を有する人では急性心筋梗塞などのリスクが高い
  • 運動習慣のない人が不慣れな運動や通常より強い運動を行うと心血管系事故のリスクが高い
  • 定期的な運動習慣の有無の確認と身体活動適正質問票による循環器、呼吸器、代謝系疾患などの有無を確認
  • 該当項目がある場合は医師による許可を得ることや制限事項、注意事項などを事前に把握

【毎回の運動開始前の体調確認】

  • 毎回の運動開始前に体調確認を実施
  • 該当項目があった場合は運動を実施せず医療機関を受診
  • 運動開始前に5分間以上安静にしてから測定された血圧が160/100mmHg以上:散歩程度の運動
  • 180/110mmHg以上:運動を控え休養を優先

【運動中の注意点】

  • 胸痛、呼吸困難、疲労感、吐き気、めまい、頭痛、回転・関節の痛み、足のもつれ、動悸の増加などの自覚症状
  • 顔面蒼白、冷や汗、唇の青色化、動きの不安定さ、呼吸が苦しい、運動速度の低下などの他覚的所見
  • これらが認められた場合は体調不良が想定されるため、運動を中止

2. 体力トレーニングの原理・原則

【過負荷の原則】

  • 各体力要素を維持・向上させるには、通常以上の負荷(強度×量)が必要
  • 急激な負荷増大は事故や傷害発生リスクが高まるため、漸進的な負荷増大が不可欠
  • 健康維持・増進:現在の体力水準よりややきつい負荷でトレーニング
  • 体力水準が高い対象者:より高い負荷でのトレーニングが必要

【特異性の原則】

  • トレーニングによる適応(効果)は実施したトレーニングの種類に応じて異なる
  • 持久力トレーニング:持久力の向上効果を得られるが、筋力向上や筋肥大の効果はほとんど期待できない
  • 体力水準の低い対象者:ウォーキングでも全身持久力や下肢筋力、筋量が増加
  • 体力水準が高い場合:特異性の原則に従ったトレーニングが必要
  • トレーニングを継続的に実施している対象者には重要な原則

【個別性の原則】

  • 個人のトレーニング効果は運動の種類、強度、量、頻度などに影響
  • 同じトレーニングでも効果に差が生じる
  • 年齢、性別、体力水準、トレーニング経験、遺伝的特性により異なる
  • 個人の特性に配慮したプログラム設計が必要

【超回復の原理】

  • 適切なトレーニングで疲労が生じ、一時的に低下した体力は休息、睡眠、栄養補給で回復
  • 元の水準を超えて回復(超回復)することがある
  • 回復期間が長期化し超回復期間を大幅に過ぎるとトレーニング効果が失われる
  • 理想的な効果を得るには、超回復期間内に新たなトレーニングを実施

3. 主なエクササイズの特徴

【レジスタンストレーニング】

  • 身体に対して負荷となる抵抗負荷を与え、主に神経-筋機能の適応を引き出すトレーニング
  • 活動した部位を中心に効果、エクササイズ種目、強度、量、休息時間、頻度のプログラム変数設定によって筋肥大、筋力、パワー、体形・姿勢の変化・改善などの効果
  • 加齢に伴う筋量減少は有病率増加、内臓脂肪増加、死亡リスクや心疾患による死亡リスク上昇
  • レジスタンストレーニング単独や有酸素運動との組み合わせ:死亡リスク低下、がん発症リスク、がんによる死亡リスク低減

【有酸素性持久力トレーニング】

  • 呼吸循環器系機能の改善に効果的
  • 運動時間の延長にともない脂肪が運動時エネルギーとして利用されるため、ダイエット目的のトレーニングとして定着
  • 最大酸素摂取量(VO₂max)が高い対象者:生活習慣病発症リスクが低く、全がん死亡の相対的危険度が有意に低い
  • 肥満、動脈硬化や高血圧、II型糖尿病、脂質異常症、軽度認知機能障害(MCI)の改善効果

【柔軟性トレーニング】

  • ストレッチングの名称で広く普及
  • 柔軟性(関節可動域)を改善するトレーニング法
  • 静的ストレッチング:目的部位を一定時間、静的に伸展させる
  • 動的ストレッチング:ラジオ体操のように身体の一部を動的に反復して伸展させる
  • 静的ストレッチングの柔軟性改善効果は動的ストレッチングより高い
  • 高血圧や動脈硬化を改善する効果も認められる
  • 動的ストレッチング:直後に行われるパフォーマンスの向上が確認され、ウォームアップでの実施が推奨

【バランストレーニング】

  • 平衡性(バランス能力)は加齢に伴い全身持久力と同様に顕著に低下する体力要素
  • バランス能力低下は高齢者の転倒リスクと関連
  • 特に高齢者には不可欠なトレーニング
  • バランストレーニングの種類:
    1. 段階的に支持面を減らして、徐々に姿勢維持が困難になる運動
    2. 重心が不安定性になるような動的運動
    3. 体幹保持に関与する筋群のトレーニング
    4. 感覚入力を減少させたバランス運動(閉眼立ちなど)
    5. 太極拳など
  • ピラティスや一部のヨガ:柔軟性トレーニングとバランストレーニングが含まれる

4. 対象別トレーニング

【子どもの身体活動の現状】

  • 小学生児童の体力・運動能力は平成20年と比較して長座体前屈以外のテストが大幅に低下
  • テレビやゲームの画面を見る時間が1日2時間以上の子どもの割合:男子63%、女子56%
  • 長時間の座位行動:体力・全身持久力の低下と関連
  • スクリーンタイム(テレビ視聴やビデオゲーム利用等):好ましくないメンタルヘルス、社会的行動の指標と関連
  • 睡眠時間にも悪影響

【成人の身体活動の現状】

  • 20歳以上の成人の1日当たりの歩数:男性6,793±4,564歩、女性5,832±3,863歩
  • 歩数の経年変化から男女とも歩数で示される身体活動量が年々低下傾向
  • 1回30分以上の運動を週2回以上実施し1年以上継続している人の割合(20歳以上):28.7%(男性33.4%、女性25.1%)
  • 平日1日の総座位時間8時間以上:男性38%、女性33%

【高齢者の身体活動の現状】

  • 呼吸循環器系機能や骨格筋量や筋機能、バランス能力を維持・改善することが必要
  • 身体活動量の増加:全死亡、心血管系疾患、がんによる死亡リスク低下
  • 動脈硬化、脳卒中、認知症、転倒、ロコモティブシンドロームの予防や改善効果
  • 1日6,000歩以上の身体活動量を満たす高齢者の割合:
    • 男性:65〜74歳で45%、75〜84歳で32%、85歳以上で11%
    • 女性:65〜74歳で38%、75〜84歳で22%、85歳以上で5%

【健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023】

  • 3メッツに相当する身体活動量や有酸素運動、筋力トレーニング、バランス運動、柔軟性運動の頻度に加え、座位行動についても指針
  • メッツ:身体活動の強度を表し、安静座位時を1メッツとし、その何倍のエネルギーを消費するかという指標
  • メッツ・時:メッツに身体活動時間を乗じた活動量の単位
  • 対象者に応じて身体活動や運動を推奨することが必要

【妊婦に対するトレーニング】

  • 内科的、産科的な合併症がない妊婦:医師の許可を条件に妊娠期間中の身体活動や運動が推奨
  • 良い時期は一般的に15〜35週間まで
  • 推奨される運動:転倒リスクが少ないウォーキングや水中エクササイズなど
  • 長時間立ったままの運動や妊娠3ヶ月以降の仰向けでのエクササイズ:起立性低血圧助長のため避ける

5. 体力要素別のトレーニングプログラム

【レジスタンストレーニング】

  • 非常に多くの種目があり、活動する筋群の分類だけでなく、エクササイズの特徴に応じた分類が可能
  • 多関節エクササイズ:複数の関節や身体運動の原動力となる大筋群(大腿部、背部、胸部、臀部など)が活動
  • 単関節エクササイズ:局所的な部位や筋群が活動、高負荷でのトレーニングは関節への負担が増すため推奨されていない
  • エクササイズの配列:疲労による質低下防止のため、多関節エクササイズは単関節より先に行い、下半身と上半身を交互に行う
  • 反復可能な最大反復回数(RM):10RMとは10回が限界となる重量を指定
  • プログラム設計の目安:
    • 筋肥大目的:6〜30RM、6〜30回、3〜5セット、セット間休息時間は多関節エクササイズで2分以上、単関節60〜90秒
    • 筋力向上目的:1〜6RM、1〜5回、3〜5セット、セット間休息時間2〜5分
    • 筋持久力向上目的:15〜30RM以上、15〜30回以上、3〜5セット、セット間休息時間30秒以下

【有酸素性持久力トレーニング】

  • 代表的なエクササイズ:ウォーキング、ジョギング、室内用固定バイク、トレッドミル、中等度の強度で行われるエアロビクスなど
  • 体重・体脂肪率が過度の場合:室内用固定バイクや水泳プログラムが安全
  • 運動強度の指標:心拍数(%HR)、速度(km/h, m/分)、仕事率(Watt)、代謝量(METs)、主観的運動強度(RPE: rate of perceived exertion)
  • 心拍数を用いる場合はHR reserve法(カルボーネン法)が広く用いられる
  • 健康増進やダイエット目的:40〜60%の強度
  • 全身持久力向上:60〜80%の強度
  • 運動時間:中強度で30分以上、高強度では20〜25分以上を推奨
  • 運動頻度:低強度は毎日でも可能、中強度では週5回、高強度では週3回、中強度と高強度運動を組み合わせた場合には週3〜5回が目安

【柔軟性トレーニング】

  • 動的ストレッチング:筋温上昇のためのウォームアップとしても利用可能
  • 筋機能、跳躍能力、スプリント走能力、投能力などのパフォーマンスが急性的に向上
  • パフォーマンス向上を目的とした動的ストレッチング:10〜15回×1〜2セット、あるいは10〜20m×1〜2セット、動作速度は速く
  • 静的ストレッチング:ウォームアップや主運動による深部筋温上昇後に全身の大筋群を中心に実施
  • 伸展させる部位に20〜60秒間を3〜4セット、反動を用いることなく伸展
  • 週2〜3回以上が推奨される
  • 静的ストレッチングにより30秒以上伸展された部位の筋力やパフォーマンスが一時的に低下
  • 静的ストレッチングはウォームアップよりもクールダウンやリカバリーで実施が推奨

【ピリオダイゼーション】

  • トレーニングとは生体に与える刺激で、刺激により適応が生じる
  • 生体は単調で変化のないトレーニングプログラムでは継続的効果が得られない
  • 定期的なエクササイズ、強度、量、頻度などの変化が必要
  • 計画的にトレーニングプログラム変数を変更することをピリオダイゼーション(periodization)と呼ぶ
  • アスリートだけでなく広い対象者に必要

6. 体力と運動能力の測定法

【測定の目的】

  • トレーニング実践者に安全で最適なトレーニング指導:
    1. 体力の現状把握
    2. 長所と短所の確認
    3. トレーニング効果の確認
  • 実態や変化を客観的にとらえるために測定は不可欠

【測定の条件】

  1. 妥当性:体力を本質的に測れているかの基準
  2. 信頼性:得られたデータがどれだけ頼りになるか、データの再現性
  3. 客観性:測定者が誰であっても同じ結果が得られるか

【体力測定法】

  • 一般的な順序:体格、身体組成、柔軟性、平衡性、敏捷性・スピード、筋力、筋持久力、全身持久力
  • 妥当性、信頼性、客観性の高い測定:測定方法、試行回数、休息時間、失敗の基準、記録方法などを規定
  • 事前に測定機器の予備テストが必要

【運動能力の測定法】

  • 文部科学省の新体力テスト:
    • 6〜11歳:握力、上体起こし、長座体前屈、反復横跳び、20mシャトルラン持久走、50m走、立ち幅跳び、ソフトボール投げ
    • 12〜19歳:上記に加え、持久走(男子1500m・女子1000m)
    • 20〜64歳:握力、上体起こし、長座体前屈、反復横跳び、20mシャトルラン、立ち幅跳び
    • 65〜79歳:握力、上体起こし、長座体前屈、開眼片足立ち、10m障害物歩行、6分間歩行
  • 高齢者:10m歩行、階段昇降テスト、全身持久力テストなどが一般的

【測定データの評価とフィードバック】

  • データの入力、クリーニング(入力ミスの確認)後に平均値、中央値、標準偏差などの記述統計で特徴を把握
  • 相関関係で体力要素間、パフォーマンス、健康状態などの関連性を把握
  • 対象者やトレーニング条件間などの差を分析する検定や分散分析などの統計により結果を他者にも適用可能
  • フィードバックは結果値だけでなく得点、順位、変化率、前回や前年度との比較などを図表を用いて示す

事故・障害予防、緊急時対応の基礎

1. フィットネスクラブにおける事故・障害の予防

【顧客の健康状態の確認】

  • 入会時の既往歴や障害の有無の確認(多くは自己申告制)
  • 運動中に発生する危険性がある重大な疾患(虚血性心疾患や脳血管疾患)防止のためのリスクスクリーニングが重要
  • リスクスクリーニングに基づく医療機関の受診や医師による運動許可
  • 日々の運動開始前:発熱や頭痛などの自覚症状、心身の疲労や睡眠、食事の摂取状況などのセルフチェック
  • 体調が悪いと自覚された場合の無理な運動回避

【施設や機器の点検・整備】

  • 定期的な施設や機器の点検、問題箇所の速やかな整備・修繕
  • 危険箇所発見時の現状放置や対応の先延ばしは避ける
  • 具体例:
    • 床の段差や傾斜、汗や水が付着しやすい場所、滑りやすいカーペットなどの点検と整備・修繕
    • 筋力トレーニング機器の正常作動確認、ケーブルやシート、滑車などの点検と調整・修理

【安全確保のためのルールや管理体制の整備】

  • 潜在的危険性を洗い出し、未然に防ぐためのルールや管理体制の整備
  • 例:
    • トレーニング機器の事故が起こりやすい箇所を洗い出し、注意喚起のシールや説明を追加
    • フリーウエイトエリアでの利用人数の上限ルール設定と適正運用

【緊急時行動計画と研修】

  • 事故・障害発生に備えた緊急時行動計画(Emergency Action Plan: EAP)の作成
  • アルバイト従業員を含むスタッフ全員への研修
  • 24時間ジムの監視システムと緊急時の通報・支援体制強化
  • 心肺蘇生や外傷に対する応急処置の全従業員による定期的研修
  • 救急用品:自動体外式除細動器(AED)、救急箱、副木・三角巾、止血帯、松葉杖、バックボード、アイシング用の製氷機の準備

2. フィットネスクラブにおける疾患と対策

【内科疾患】

  • 心疾患と脳血管疾患:
    • 心疾患の不整脈や心筋梗塞、脳血管疾患の脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など
    • 運動中に突然発症し生命に関わる疾患
    • 予防対策:医師によるメディカルチェック、入会時のリスクスクリーニング、運動開始前のセルフチェック、日常の血圧管理
  • 熱中症:
    • スタジオでの多人数のグループレッスンでは夏期に室温や湿度のコントロールが難しく熱中症のリスク
    • 予防対策:参加者の体調チェックや水分補給の指示、レッスン人数制限や空調設備の整備
    • 熱中症発生時の救急隊到着までの応急処置マニュアル作成と訓練、保冷剤や扇風機の準備

【整形外科疾患】

  • 急性外傷:
    • スタジオレッスン中のつまずきによる足首の捻挫
    • 転倒による打撲や骨折
    • バーベルやダンベルの身体への落下・衝突による打撲
    • ラックに手を挟む、マシンの滑車に手を引き込まれる切傷や指の切断
    • 無理な重量や危険な姿勢での動作による筋・腱の断裂及び関節・骨の損傷
    • 頭部への強い衝撃による脳震盪や頸椎損傷の可能性
    • 救急時の準備:バックボード(頸部固定具付ストレッチャー)の装備・訓練
  • 慢性障害:
    • 長期間の定期的運動継続中の慢性障害(例:膝の痛み、肩の痛みや腕が上がらなくなる)
    • 予防:運動プログラムの種目や条件(強度・量・頻度)の定期的点検、疲労と休息による回復のバランス確認
    • 適切なクールダウン、疲労回復や身体のケアに関するサポート
    • 痛みの訴えがあった場合:医療機関受診と適切な診断・治療、医師の指示による運動復帰時期や内容の厳守

3. 筋力トレーニングにおける事故・障害と予防対策

【機器のレイアウト】

  • 人と器具、人同士の接触事故防止のための機器の間隔や動線、通路幅に配慮
  • 利用者1人あたり2.5㎡以上のスペース確保
  • 各機器の間隔は60〜90cm以上、通路幅は90cm以上
  • バーベルを直列する場合、バーベル間を90cm以上空ける
  • フリーウエイトエリアの鏡は床から30cm以上離した高さに設置

【筋力トレーニングマシン】

  • 動作の軌道が一定で初心者にも容易に動作習得可能な利点
  • 個人の体型や可動域に合わない場合があり関節への過剰負担リスク
  • ウエイトスタック方式のトレーニングマシン使用中に上下移動する板状のウエイトに指を挟まれる可能性
  • ケーブル(ワイヤー)を用いたプーリーマシンでの指引き込み危険性
  • 経年劣化によるケーブル摩耗や破断、ボルトのゆるみや損傷、フレームの溶接箇所の破損などの危険性
  • 定期的な点検・整備の必要性
  • マシンのパッド部分のシート損傷による切り傷や金属露出による創傷リスク

【フリーウエイト】

  • バーベルやダンベルと、これらを使用するラックやベンチなどの総称
  • 使用時の落下・接触事故や姿勢や動作の不良による外傷リスク
  • ベンチプレスは人気が高いが、補助者なしで実施すると挙上できなくなった際にバーベルが身体に落下したり首がベンチとバーの間に挟まれる危険性
  • 基本的に補助者をつけることが必須、ラックのセイフティーバー適切設置で直接落下防止可能
  • プレートの着脱は2名で左右同時実施が望ましく、片手での着脱はバーのバランス崩壊リスク
  • プレートが手から滑り落ちて足に落下する危険性
  • プレート着脱は両手で1枚ずつ、床に置かれたプレート持ち上げ時の頭部衝突リスク
  • 補助者の腰部などへのけがの可能性、使用重量や技術レベルを考慮した対応
  • クラブ内での補助に関するルールやガイドライン策定
  • ダンベルを用いたサイドレイズやバーを担いだフォワードランジなどでのウエイトの水平方向移動による近くの人への接触や衝突リスク
  • イヤホン使用時の周囲の注意喚起の声が聞こえず事故につながるリスク、フリーウエイトエリアでのイヤホン・ヘッドホン使用制限

4. 有酸素性トレーニングにおける事故・障害と予防対策

【トレッドミル(ランニングマシン)の使用上の注意】

  • 転倒事故に十分留意する必要性
  • 特に汗が走路に落ちると滑りやすくなることに注意
  • 転倒時の自動停止安全装置作動確認
  • つまずき時の走路後方への転倒・落下リスクへの対応
  • トレッドミル配置時の走路後方の十分なスペース確保
  • 別途通路の設置
  • 髪の毛やウェアが走路やローラー部に巻き込まれる危険性

【エリプティカルトレーナー(クロストレーナー)使用上の注意】

  • バランスを崩したり他者の呼びかけに応じて振り向いたりした際の転落リスク
  • 器具からの滑り落下や打撲、身体の一部がハンドルやペダルに挟まれる危険性
  • 使用中はハンドルから手を離さないこと
  • 側方や後方を振り向くことを避ける

5. スタジオにおける運動中の事故・障害と予防対策

【転倒事故の防止】

  • エクササイズ中に床面が汗で濡れた場合の速やかなモップ対応
  • 高齢者の加齢に伴うバランス能力低下や骨粗鬆症などによる転倒・骨折リスク
  • 強度の高いプログラム実施時の足への着地衝撃と下肢の慢性障害発生リスク
  • 参加者のプロフィールに応じた無理のないプログラム選択
  • オーバーユース予防のための適切なアドバイス
  • スタジオ床材の経年劣化による転倒や障害への影響、定期的な点検とメンテナンス

【ホットヨガの特有リスク】

  • ホットヨガは他のプログラムと比べて「体調が悪くなった」「けがをした」という経験者の割合が高い
  • めまい、のどの渇き、吐き気、頭痛などの症状
  • レッスン環境は熱中症予防指針で「危険」に相当
  • 十分な水分補給の促進とレッスン中の体調に応じた涼しい場所での休憩の配慮

6. オンラインレッスン参加時の事故・障害と予防対策

【オンラインレッスン参加時の安全上の留意点】

  • 転倒防止のために滑りにくい床上で実施、腹筋も十分留意
  • 接触による事故防止のためガラス戸や棚、壊れやすい物などから離れた場所で実施
  • 運動中の子どもや動物の接近への注意
  • 熱中症予防のための室内の温度や湿度、換気への配慮

7. 外傷が発生した場合の緊急時対応

【皮膚に傷がない場合のRICE処置】

  • 筋・腱の損傷発生時には患部に発赤や腫れが出現し、放置すると悪化や回復遅延リスク
  • 重症度把握後の「RICE処置」の速やかな実施
  • RICE処置の意味:
    • Rest(安静):患部を安静に保ち、動揺による悪化防止や血液循環の抑制
    • Ice(冷却):患部冷却による血管の収縮や血流量減少
    • Compression(圧迫):患部圧迫による内出血の抑制
    • Elevation(挙上):受傷部位を心臓より高く挙げることで血流抑制

【皮膚に傷がある場合の止血法】

  • 皮膚の開放性外傷(創傷)からの出血時の止血方法:
    1. 直接圧迫止血法:患部を心臓より高く挙げ、清潔なガーゼ等で傷口を直接圧迫
    2. 止血点圧迫止血法:出血部位から心臓に近接した動脈(止血点)を圧迫
    3. 止血帯圧迫止血法:太い血管からの出血時の専用止血帯または三角巾と棒を用いた止血(四肢のみ適応可能)

8. 一次救命処置(Basic Life Support: BLS)

【緊急時の対応手順】

  • 施設利用者の突然倒れ、心停止や呼吸停止疑いの場合:
    1. 速やかな119番通報
    2. 救急隊到着までの一次救命処置(心肺蘇生法、AED使用など)の迅速かつ適切な実施
    3. 心停止や呼吸停止は生命にかかわる重大な事態
    4. フィットネスクラブでの全従業員対象の定期的な一次救命処置訓練・研修の実施

第4章 店舗運営

【フロント業務の基本】

フロントの役割と重要性

  • フロントはスポーツクラブの第一印象を決める重要な役割を担う
  • お客様がスムーズに施設利用できるよう事務手続きを整える
  • セキュリティ意識を持ち、会員カードと本人の一致確認を行う

フロントの基本業務

  • 「入館(チェックイン)」:明るい笑顔でアイコンタクトを取り歓迎を伝える
  • 「退館(チェックアウト)」:お帰りのお客様の表情を見て、アイコンタクトを取る
  • 「忘れ物・オプションレンタル品の管理」:定められた手順での管理が重要
  • 「問い合わせ対応・見学対応」:会員のクラブライフをサポートする役割と入会検討者への説明
  • 「相談窓口機能」:地域コミュニティとの接点としての役割

入会手続き

  • 入会希望者が店舗規約に準じているか確認
  • 規約や利用条件の説明と承諾
  • 同意書への署名・捺印の確認
  • 会員種別の決定と説明
  • 入会申込書記入時の個人情報保護への配慮

会員証発行の意義

  • 会員証は店舗会員の証明
  • 個人情報保護の観点からの取り扱い
  • ICTの活用(アプリやQRコードなど)によるセキュリティ向上

【売上金管理の基本】

入金業務の基本フロー

  • 商品金額の確認(口頭で金額を伝える)
  • レジ打ち込み
  • 現金の場合:お預かり(トレイ使用)→お預かり金額の確認→レジ清算→釣銭確認→釣銭返還
  • キャッシュレスの場合:商品金額確認→各端末操作→精算処理→売上シート渡し

レジ金管理

  • 開始前の金種表による金額確認
  • レジ点検:過不足金発生の早期発見と原因追及
  • レジ精算:営業終了時の最終確認(営業終了30〜60分前に販売・入金業務終了)
  • 過不足金発生時:保管レシートでの確認と報告

入金取消業務と返金業務

  • 「入金取消伝票」を用いた記録と不正防止
  • 返金業務では「返金伝票」に返金額・理由・担当者を記入

【ジム運営業務】

ジムの目的と意義

  • トレーニングジムはフィットネスクラブの中核
  • カーディオトレーニングエリア(有酸素運動)とストレングストレーニングエリア(筋力強化)の区分
  • ストレッチエリアでのウォーミングアップとクールダウンの重要性

ジムの環境づくり

  • 活気あるジムは良い雰囲気をもたらす
  • スタッフとトレーナーが一体となった顧客サポート体制
  • 安全性確保のための適切な機器配置と環境管理

マシンの安全管理

  • 日々のマシン故障や危険箇所の点検
  • 定期的なメンテナンスの実施
  • マシン点検表による記録と管理

トレーニングマシンの種類

  • カーディオマシン:リカンベントバイク、アップライトバイク、トレッドミルなど
  • ストレングスマシン:レッグプレス、チェストプレス、ラットマシンなど
  • フリーウェイト:ベンチプレス、パワーラックなど

利用者管理とコミュニケーション

  • 顧客の目的やニーズの把握
  • 適切なトレーニング方法の提案
  • 継続支援のための接客・接遇の工夫

【スタジオ運営業務】

スタジオプログラムの目的と意義

  • 各社のクラブ戦略を反映したプログラム編成
  • 参加者同士のコミュニティ形成と会員継続効果
  • 運動習慣化と継続をサポートする役割

スタジオの施設管理と環境づくり

  • 施設規模に応じた適切なキャパシティ(収容人数)設定
  • 音楽設備や鏡の管理、清掃
  • 雰囲気づくりの重要性

スタジオプログラムの変遷

  • 1980年代:エアロビクスブーム
  • 1990年代:ローインパクト・ステップクラス
  • 2000年代:プレコリオ・ヨガ・ピラティス
  • 2010年代以降:HIIT系、オンラインクラス、スモールグループクラス

プログラムのカテゴリーとエクササイズ

  • 心肺機能向上(エアロビクス)系:リズミカルな有酸素運動
  • 機能改善(調整)系:中高年層の機能改善を目的としたプログラム
  • カルチャー系:習慣づけや健康維持を目的としたもの
  • ダンス系:技能習得型と「シンプル・高強度・高効果」型
  • プレコリオ系:事前に振り付けられたプログラム
  • ヨガ、ピラティス(マインド)系:身体と精神の両方を鍛える
  • HIIT系:高強度インターバルトレーニング

【プール運営業務】

プールの目的と意義

  • 水圧・浮力を利用した特有の運動効果
  • 幅広い年齢層が楽しめる場
  • 怪我や病気の人も医師の指示で運動が可能

プールの環境管理

  • 水温(25〜28度)と室温(27〜30度)の適切な管理
  • 監視員の配置と安全管理体制の整備
  • 水質検査(遊離残留塩素濃度0.4mg/ℓ以上、1.0mg/ℓ以下)

プールでの備品管理

  • ビート板、プルブイなどの練習補助具の管理
  • プールフロア(水深調整台)の安全確認
  • ヘルパー(スイムフロート)などの安全器具の点検

水の特性と水中運動の利点

  • 水圧:血流促進効果、呼吸筋強化
  • 抵抗:あらゆる方向の動きがエクササイズになる
  • 浮力:関節への負担軽減、リラックス効果
  • 水温:体温調節機能の活性化

【スクール運営業務】

スクール種目

  • スイミングスクール:子ども向けから成人向けまで幅広い展開
  • 体操スクール:マット運動や跳び箱など多様な種目
  • ダンススクール:ヒップホップ、チアダンス、バレエなどの人気
  • テニス、ゴルフ、その他スポーツスクール

施設と備品管理

  • 年齢や目的に合わせた設備の整備
  • 水深調整台、マット、ステップ台などの専用器具の管理
  • 定期的な点検と修繕

出欠管理とレベル進級

  • クラスごとの名簿作成と出席確認
  • 欠席時の振替制度の運用
  • 年齢と習熟度によるクラス編成と進級基準の設定

レッスンタイムテーブル管理

  • アイドルタイム活用による施設の有効利用
  • 週間スケジュールと枠毎のローテーション管理
  • 複数種目のスクール間の連携

【イベントの企画・運営】

イベントの目的と効果

  • 会員獲得:非会員を対象とした体験機会の提供
  • 会員継続:成果発表や挑戦の場の提供
  • 社会貢献や地域貢献:地域コミュニティへの参画

イベントの流れと6W2H

  • Why(なぜ)、Whom(だれに)、What(何を)、How(どのように)
  • When(いつ)、Where(どこで)、Who(だれが)、How much(いくらで)
  • 準備段階、実施中、終了後の各フェーズでのチェックリスト活用

イベント損益管理

  • 参加費単価×参加者数の売上計算
  • 変動費(参加者数に比例)と固定費の区分
  • 最低催行人数の設定と対応策

緊急時の対応体制

  • 救護・緊急連絡体制の整備
  • AEDなどの救急設備の配置
  • 中止基準の明確化(大型地震、台風など)

イベント関連法規

  • 著作権、個人情報保護法、暴力団排除条例など関連法規の遵守
  • 参加同意書の適切な運用

フィットネスクラブの経営と付帯事業

付帯事業の基本概念

付帯事業の役割と現状

  • フィットネスクラブの主な収益は「会費収入」だが、近年は月会費以外の収入構成比が高まっている
  • 付帯事業収入は会員数の増減による収益性の不安定さを補完する役割を持つ
  • 経済産業省の「特定サービス産業実態調査」によると、2015年度の月会費収入の割合(売上高構成比)は72%から2023年度には63%に減少
  • 内訳では、食堂・売店売上高は5.2%→3.6%と減少、スクール収入は17.7%→28.8%と大きく伸長

付帯事業の目的

  • フィットネスクラブは施設の利用権利に対する月会費を徴収して収益を得る「会員制ビジネス」
  • フィットネスクラブは固定費が大きいビジネスモデル(施設関連費用、水道光熱費、賃借料、維持管理費、人件費など)
  • 付帯事業の目的は、会員集客を目指しながら会費以外の収益を上げてクラブの収益性を高めること

付帯事業の種類

  • 物品販売(ショップ販売)
  • レンタル事業
  • カルチャー教室やスクール事業
  • サービス販売事業

物販事業(ショップ販売)

物販の特徴と形態

  • 従来はクラブ店舗内での現物商品の取り引きが主流
  • 近年はオンライン上での取引きや販売も増加
  • オンライン販売のメリット:
    • 在庫の現物管理やレジの手間が省ける
    • 商品の陳列スペースが不要
    • 消費者は営業時間に縛られず好きな時間に購入可能

取扱商品

  • フィットネスウェアや水着
  • シューズ製品
  • コスメティック商品
  • サプリメント
  • トレーニング関連グッズ
  • 最近はパーソナルトレーニングなどサービスのオンライン販売も拡大

店舗販売における商品管理

商品知識

  • 各商品の基本情報(価格/機能)を正確に理解することが重要
  • 単なる情報だけでなく、商品の便益や購入者の環境・条件も踏まえた知識が必要

販売フロー

  1. 購買管理:商品選定、複数取引先からの見積もり比較、発注
  2. 売上管理:現金管理(レジでの現金受け渡し、盗難防止)と売上分析
  3. 在庫管理:商品の動きと数量管理、盗難などによるロスの防止

売り場づくり

  1. 価格設定:消費者が求めやすい値付け(近隣店舗やインターネットも参照)
  2. 陳列方法:欲しい商品が見つけやすく、比較しやすい陳列の工夫
  3. 販売促進:売上目標設定、販売促進策の実施

サービス販売事業

パーソナルトレーニング

  • 会費外の付帯事業収入として中核となるサービス
  • 客観的かつ専門的な視点からのサポートを提供
  • 自社スタッフによる提供と、外部資格保持者との契約の2種類がある
  • マンツーマン形式から少人数スクール型へと多様化
  • オンラインでの展開も進む

オンラインレッスン

  • スタジオプログラムを自宅や職場など場所を選ばず受講できるサービス
  • ライブ配信とアーカイブ形式がある
  • 大規模な施設を構える必要がなく、通信環境によっては数百名以上の同時受講も可能

エステティック・ボディケア

  • クラブ内の施設や空間を有効活用したサービス
  • 「美容」や「コンディショニング」という切り口で提供
  • エステティックや治療院、整骨院などの付帯施設
  • 複合的な目的(休息、ケア、トレーニング)を一か所で提供できる利便性

レンタル品・ロッカー

  • ウェア、タオル、シューズなどのレンタル(300〜700円程度)
  • 月会費制(月2,000〜3,000円程度)のレンタルサービス
  • セルフサービス化の進行
  • 荷物預かり用の契約ロッカーサービス(月額1,000〜2,000円)

プロテイン・水素水サーバー

  • 専用ICタグやコインで利用できるサービス
  • 月会費制で1,000〜2,000円程度の価格帯
  • プロテインサーバーはシェイカー不要で利便性を追求(月額3,000円前後)
  • 多様なフレーバーを用意

福利厚生代行

  • 企業向けサービスで、社員の健康管理をサポート
  • 提携施設の割安利用、特典、傷病時の一時金支給など
  • 多くの場合、月会費と同時に口座から引き落とされる

スクール事業

スイミングスクール

  • 総合型クラブでは、アイドルタイム(午後の利用者が少ない時間帯)を活用
  • 幼児・児童向けのスクールが多い
  • 収益改善施策として効果的(空き時間と空きスペースの有効活用)
  • 一般的に500名未満では採算が合わないが、1,000名を超えると大きな増益につながる

その他のスクール事業

  • ゴルフ、テニス、ダンスなど多様なスクール展開
  • 施設やスペースの有効活用の観点から様々な取り組みが行われる
  • 時流の影響を受け、プロ選手の活躍により会員や利用者が増加することもある
  • プログラミング教室など運動とは異なる学習・知育系スクールの展開も

クラブ内での緊急対応

緊急事態の分類

  1. 災害:地震、火災、落雷、豪雨、台風など
  2. 事件:盗難、盗撮、暴力行為、反社会勢力の介入など
  3. 事故:怪我、病気、交通事故など
  4. その他:システム障害、設備故障、クレームなど

災害発生時の対応

  • 地震:建物の耐震構造確認、設備の防火落下防止、避難経路確保
  • 火災:初期対応体制の確立(通報連絡班、消火班、避難誘導班など)
  • 豪雨・台風:浸水防止、飛散物確認、施設の二次災害予防

事件・事故発生時の対応

  • 人命救助を第一とする
  • 医師の診断を仰ぐことを原則とする(軽微な場合を除く)
  • 複数名で対応し、事実を記録する
  • 盗難発生時は現場保全と警察への迅速な通報を行う

組織的な対応の重要性

  • 緊急連絡網の整備
  • 役割分担の明確化
  • 全従業員による緊急対応マニュアルの理解
  • 定期的な訓練の実施

第5章 顧客マネジメント

【顧客対応と接客の心構え】

ホスピタリティの意義

  • ホスピタリティの定義:接客・接遇だけでなく、人と人、人とモノ、人と社会、人と自然の関わりにおいて具現化されるもの
  • フィットネスクラブの役割:お客様の健康な生活をサポートする環境づくり
  • 相互満足:ホスト(主人)とゲスト(客人)の間に「相互満足」があってこそ成立
  • 共創:両者が相互に満足し、信頼関係を強め、共に価値を高めていくこと

第一印象(身だしなみ)

  • 重要性:初対面の印象が後々まで相手の脳に残る「初頭効果」がある
  • 身だしなみの基本:清潔感、ビジネスマナーに即した服装
  • NGスタイル例
    • ヘアスタイル:極端な髪型、不自然なヘアカラー
    • 服装:汚れている、サイズが合っていない、露出度が高い
    • アクセサリー:ケバケバしいもの、歩くと音がするもの

表情と笑顔

  • 3つの重要点:目、口元、心
  • 笑顔の効果:ホスピタリティの代名詞、お客様の不満を防止
  • 注意点:仕事には緊張感を持ちつつ、笑顔で対応(笑い過ぎにも注意)

挨拶と立ち姿・お辞儀

  • 挨拶の基本:明るい声で、自分から、いつも、すべてのお客様に
  • 立ち姿の基本:かかとをつける、おなかに力を入れる、手を前でそろえる
  • お辞儀の種類:会釈(15度)、敬礼(30度)、最敬礼(45度)
  • 注意点:歩きながらのお辞儀は失礼にあたる

【コミュニケーション】

正しい言葉づかい

  • 敬語の種類
    1. 尊敬語:相手や関係ある人の動作を敬う
    2. 謙譲語:自分や関係ある人の動作を低める
    3. 丁寧語:敬意をこめて美しくする
    4. 美化語:上品に表現する言葉
  • 若者言葉・バイト敬語:避けるべき(例:「~っす」「~の形」)
  • 「ら」抜き言葉:「出れない」→「出られない」のように正しく

クッション言葉

  • 定義:会話をスムーズにする緩衝材となる言葉
  • 効果:直接的表現を避け、丁寧な印象を与える
  • :「恐れ入りますが」「お手数ですが」「誠に申し訳ございませんが」

電話対応

  • 基本マナー
    1. 3コール以内に出る
    2. 第一声は明るく
    3. 名前と所属を名乗る
    4. 重要情報はメモを取る
    5. 長く保留にしない
  • 伝言メモ:日時、相手名、用件など明確に記録

【入会問い合わせ・見学者への対応】

見込み顧客対応の視点

  • 重要性:1名の顧客獲得で年間約96,000円の売上向上
  • 対応の基本
    1. 顧客ニーズを吸い上げる
    2. ニーズに沿った案内と体験
    3. 施設の特長を説明
    4. モチベーションを高める工夫
  • 見学体験の基本フロー
    1. 笑顔での出迎え
    2. アンケートでニーズ把握
    3. 目的に合わせた案内・体験
    4. クロージング(感想を聞き、次の行動を促す)

【顧客対応と課題解決】

予約管理と忘れ物管理

  • 予約管理の基本:氏名、時間、希望サービス、連絡先を確認
  • 忘れ物対応
    1. 拾得日、場所、カテゴリ、物品名を記録
    2. 受け渡し時にサインをもらう
    3. 紛失物詐欺に注意する

クレーム対応

  • クレームの種類
    1. 日常的クレーム:商品やサービスへの不満
    2. 特殊なクレーム:金銭要求や威圧的なもの
    3. お門違いなクレーム:非常識な要求
  • クレーム発生の心理
    1. 本当に困っている
    2. 損をしたくない、不当な扱いを受けたくない
    3. クラブを良くしてあげたい
    4. イライラしている

クレーム解決の基本手順

  1. 相手の心情を理解し、不快にさせたことをまず謝罪する
  2. 問題点と原因事実確認を行う
  3. 解決策を冷静に提示する
  4. 再度謝罪し、意見に対して感謝する

クレーム解決の3つのスキル

  1. 仕事力:自分の仕事と商品・サービスを熟知する
  2. 対応力:素早い状況判断と解決策を導くスキル
  3. 冷静な判断力:自分の感情にフォーカスせず客観的視点を持つ

【顧客満足】

顧客満足の概念

  • 定義:CS(Customer Satisfaction)、お客様が満足すること
  • 満足の方程式:満足度 = 充足度/期待度
  • 顧客獲得コスト:新規顧客獲得は既存顧客維持の5倍のコスト
  • 顧客心理:自分のことをわかってほしい、大切にしてほしい、耳を傾けてほしい

カスタマーサクセス

  • 定義:自社のサービスや商品の価値を最大限提供し、顧客満足を高め、成功に導くこと
  • 効果:解約減少、顧客単価向上、良い口コミ増加、人材育成
  • 必要要素:マーケティングとコミュニケーションの連携

カスタマーハラスメント(カスハラ)

  • 定義:従業員やサービス提供者に対する不当な要求や暴力行為
  • 調査結果:サービス業従事者の46.8%が被害経験あり
  • 主な行為:暴言(39.8%)、威嚇・脅迫(14.7%)、同内容の繰り返しクレーム(13.8%)
  • 法的問題:脅迫罪、侮辱罪、強要罪、不退去罪などに該当する可能性がある
  • 対応重要性:従業員の安全と法的権利を守るため

第6章 チームワークとコミュニケーション

【1. 組織と業務分担の考え方】

■組織とは

  • 組織の定義: 特定の目標を達成するために各々が役割を持ち、機能を分担しながら結合される集団のこと
  • 組織図: 組織内での分業、役割、権限などの仕組みを図示したもの
  • フィットネス業界の組織例: 店舗全体、管理部門、企画部門、フロント、フィットネスなどのセクション

■組織と戦略の関係

  • チャンドラーの考え方: 「組織は戦略に従う」(戦略実行のための分業システムが組織構造)
  • アンゾフの考え方: 「戦略は組織に従う」(組織のメンバー一人ひとりの能力発揮が戦略成功の鍵)
  • 両者の関係: 双方向的で相互に影響し合う関係(環境変化に応じて両方を柔軟に見直す必要がある)

■プロジェクトベースのチーム

  1. タスクフォース
    • 目的: 具体的な問題解決や緊急課題への対応
    • 特徴: 短期間で解決するために必要なスキルや知識を持つメンバーで構成
    • 例: 災害時の緊急支援活動、パンデミック時の緊急対応
  2. プロジェクトチーム
    • 目的: 特定のプロジェクトの目標達成
    • 特徴: 明確な目的、予算、スケジュールがある
    • 例: 新商品の開発、ITシステム導入、CSR推進
  3. クロスファンクショナルチーム
    • 目的: 異なる視点や専門知識を融合して複雑な課題を解決
    • 特徴: 様々な組織、部門、職能からメンバーを選出
    • 例: 経営改革、新市場開拓

■業務分担の考え方

  • 業務分掌: 組織やチームの役割、職務内容、権限・責任の範囲を定義する基本的ツール
  • メンバーの成長視点: 仕事を通じた成長機会を意図的に作り出す(実績の70%が仕事、20%が薫陶、10%が研修)
  • メンバーの強みを活かす: 「得意・不得意をチームで補い合う」という視点の重要性
  • イレギュラー事項への対応: 予定外の事柄にも柔軟に対応する主体性を持つことでチームワークが向上

【2. 仕事の進め方】

■仕事を進める上での基本姿勢

  • 働くことの意義の明確化: 自身の人間性を高め、スキルや能力に磨きをかけ、社会に貢献する
  • 主体性と自主性:
    • 「自主性」: 決められた仕事や指示を自ら進んで実行する(例:清掃業務を自ら進める)
    • 「主体性」: 決められた仕事以外にも自らの意思で行動する(例:改善提案を行う)

■情報共有の意味と方法

  • 情報共有の重要性: 仕事の進捗確認、業務配分の見直し、チーム全体の成果向上のため
  • 報告・連絡・相談(報連相)の役割:
    1. 業務の流れを円滑にする潤滑剤
    2. 作業能力向上の役割
    3. 情報整理能力と客観的視点を向上させる役割

■報告・連絡の仕方

  • 報告のタイミング:
    1. 長期の仕事において初期段階を終了したとき
    2. 仕事の進め方に変更が必要なとき
    3. 指示された仕事が終わったとき
    4. 新しい情報を入手したとき
    5. ミスをしたとき
    6. 事故や事件が発生したとき
  • 事実を正確に伝える: 「思った」「感じた」は個人の意見であり、推測であることを明確にする

■相談の仕方

  • 早めの相談: 問題を抱え込まず、早めに上司や先輩、同僚に相談する
  • 相手の了承を得る: 相手の都合や時間を考慮し、内容を簡潔に伝える

■コミュニケーション手段の使い分け

  1. 口頭・電話: 急ぎの場合、感情やニュアンスを伝えたい場合
  2. メール: 間違えるとトラブルになるような情報(数字、日付、場所、名前、電話番号など)
  3. 資料作成・メール配信: 複雑な内容や会議での説明が必要な場合

【3. PDCAサイクルを意識した業務遂行】

■PDCAサイクルとは

  • 計画(Plan): 目標を設定しその達成に必要な計画を立てる
  • 実行(Do): 計画を実行する
  • 確認・評価(Check): 実行した結果を計画と比較して評価分析する
  • 改善行動(Action): 次の行動や計画を満たしていない原因に対して改善する
  • 継続の重要性: サイクルを繰り返すことで習熟度が高まり、成果が向上する

■目標設定の重要性

  • SMARTの法則:
    • Specific(具体的である)
    • Measurable(測定可能である)
    • Achievable(達成可能である)
    • Relevant(関連性がある)
    • Time-bound(期限付きである)

■明確な目標設定のメリット

  1. 方向性の一致: チームが一丸となって同じ目標に取り組む
  2. 計画フェーズの精度向上: 具体的なギャップと対策が明確になる
  3. 実行フェーズの効率化: 判断が迅速かつ的確に行える
  4. 評価フェーズの客観性向上: 進捗確認の基準が明確になる
  5. 改善フェーズの効果向上: 改善すべきポイントを特定しやすくなる

【4. コミュニケーションの重要性】

■コミュニケーションとは

  • 定義: 互いに意志や感情、思考を伝達し合うこと
  • 職場での重要性: 成果を出すため、社会のニーズや環境変化に対応するために不可欠

■コミュニケーションの基本姿勢

  • バーバルコミュニケーション: 言葉を使った情報伝達
  • ノンバーバルコミュニケーション: 言語以外の方法(態度、表情、動作、声のトーンなど)

■メラビアンの法則

  • 情報の重要度: 視覚情報55%、聴覚情報38%、言語情報7%
  • 言語よりも視覚・聴覚の印象が強い: コミュニケーションには言語情報だけでなく、非言語情報も重要

■ノンバーバルコミュニケーションの要素

  1. パーソナルスペース: 相手との距離や位置関係
    • 適切な距離感の工夫:上司と部下の会話では90度の角度と同じ目線の高さが効果的
  2. ビジュアル: 身振り、姿勢、表情、服装などが与える印象
  3. ボーカル: 声の大きさや高低、トーン、スピード、言葉の抑揚

■自分自身とのコミュニケーション能力

  • 内なる対話の重要性: ストレス管理やパフォーマンス向上に効果的
  • ポジティブな自己対話: 「私はできる」というポジティブな語りかけがモチベーションを高める

【5. リーダーの役割とフォロワーの役割】

■チームとグループの違い

  • グループ: 単に人を集めただけの集団(目的なし)
  • チーム: 共通の目標を達成するために集まった集団(目的あり)
  • 良いチームの要素: 良いリーダー、メンバー全員の参画意識、明確な役割分担、相互尊重と協力

■リーダーとリーダーシップ

  • リーダー: チームの中でスタッフに目指すべき方向を示し、目標達成のためにチームを導く役割
  • リーダーシップ: 目標達成のために個人や組織に対して発揮される影響力

■フォロワーシップとは

  • 定義: 組織の中でチームの目標達成に向けて、フォロワーがリーダーを補佐している機能
  • 重要性: リーダーのためだけでなく、チーム共通の目的や目標達成のために発揮されるもの

■フォロワーの役割

  • 現場からの視点: 現場の実情を詳しく把握し、リーダーへ情報提供する
  • バランス感覚: 顧客、従業員、組織などの異なるステークホルダーへの影響を考慮する

■フォロワーに必要な「貢献力」と「提言力」

  • 貢献力: 組織の決定やリーダーの指示を前向きに受け入れ、実現に向けて動く行動力
  • 提言力: 組織の決定やリーダーの指示を吟味して、健全な意見・提案を行う発言力

■フォロワーの4つのタイプ

  1. 協働者(良きフォロワー): 貢献力(高)・提言力(高)
    • 特徴: リーダーに対し健全な意見・提案を行いながら、実現に向けて前向きに行動する
  2. 従属者: 貢献力(高)・提言力(低)
    • 特徴: 指示に従順だが、意見・提案が少ない。積極的な学習が必要
  3. 破壊者(アンチリーダー): 貢献力(低)・提言力(高)
    • 特徴: リーダーに批判的で、チームに負の影響を及ぼす
  4. 逃避者: 貢献力(低)・提言力(低)
    • 特徴: 自己重要感が低く、チーム全体の士気を下げる

■良きフォロワーになるための4つの役割

  1. 与えられた役割を正しく理解し、実行する
  2. リーダーをサポートし、助言する
  3. リーダーの指示がなくてもメンバー同士で互いにサポートし合う
  4. 自らコミュニケーションを図り、情報収集する

■「権限のないリーダーシップ」

  • 自発的なリーダーシップ: 役職や権限がなくても、「自分がリーダーならどうすべきか」と考え行動する姿勢
  • 良きフォロワーが良きリーダーになる: 主体的にリーダーの判断をサポートすることで、リーダーシップ能力も高まる

第7章 施設・設備管理の意義と重要性

【施設・設備管理の基本的な考え方】

  • フィットネスクラブでは、安全で快適な施設・設備はサービスやプログラム提供の大前提である。
  • 施設・設備は使用を続けるうちに劣化や機能低下が生じるため、適切な状態で維持することがクラブ運営の重要課題となる。

1. 総合クラブの施設内容

【主な施設と設備】

  • 総合フィットネスクラブの主要施設:プール、ジム、スタジオ、ロッカールーム、浴室(温浴施設)
  • その他の付加施設:テニス、クライミングなど

【プール】

  • 主な用途:スイミング、水中歩行、水中エクササイズ
  • 特殊プール:歩行専用プール、マッサージプール
  • 標準規模:450㎡~900㎡(25mプール標準、5~8コース)
  • 仕上げ材:タイル、FRP、アルミ、ステンレスなど

【ジム】

  • 主な用途:カーディオトレーニング、ストレングストレーニング
  • トレーニング前後に使用するストレッチエリアはジムの必須アイテム
  • ヘルスチェックコーナー:体重、体脂肪だけでなく体組成、姿勢などのチェック
  • 標準規模:300㎡~1000㎡
  • 仕上げ材:ゴム床、タイルカーペット、フローリングなど

【スタジオ】

  • 主な用途:エアロビクス系、ダンス系、格闘技系、筋力系、ヨガ系など
  • 標準規模:150㎡~300㎡(壁面鏡、音響、照明などの設備が必要)
  • 仕上げ材:フローリング材、衝撃吸収床材など

【ロッカールーム】

  • 主な用途:更衣
  • 洗面:鏡、ドライヤーなど
  • 併設アイテム:タンニング、休憩スペース
  • 標準規模:200㎡~400㎡
  • 仕上げ材:塩ビ系ノンスリップフロアタイルなど

【浴室(温浴施設)】

  • 主な用途:入浴
  • 浴槽設備:ジェットバス、バイブラバスなど
  • 洗い場:座って洗うカラン付タイプと立って洗うシャワータイプの組み合わせ
  • 併設アイテム:サウナ
  • 標準規模:150㎡~300㎡
  • 仕上げ材:タイル、石材など

【その他の施設】

  • スポーツ施設:テニスコート、ゴルフレンジ、アリーナ、クライミングウォール
  • サービス施設:フロント、ラウンジ、契約ロッカー、ショップ
  • リラクゼーション施設:リラクゼーションルーム、エステティックサロン、マッサージルーム
  • 機械室:プールや温浴のろ過設備、熱源のボイラーなど(約200㎡)

【主な設備】

  • 給排水設備:給水管、排水管、貯水槽、ボイラー設備、衛生設備など
  • 空調設備:ダクト、冷媒配管、冷温水発生機、ヒートポンプなど
  • 電気設備:電灯コンセント、受変電設備、動力設備、通信、TV共聴など
  • その他設備:ろ過設備、昇降設備、防災防火設備、調理設備など

【主な機器】

  • トレーニング機器:カーディオマシン、ストレングスマシン、フリーウエイトなど
  • 音響機器:スピーカー、パワーアンプ、ミキサー、プレイヤーなど
  • 映像機器:モニター、増幅器、分配機など
  • その他機器:身体測定機器、タンニングマシン、マッサージ機器など

2. 総合クラブの構成と動線

【動線の重要性】

  • 動線:人が移動する経路
  • 施設アイテムの配置や構成は動線と密接な関係がある
  • 大きく3つの動線に分けられる

【「大人動線」と「子ども動線」】

  • 大人動線:主に大人向け会員制フィットネスクラブの利用動線
  • 子ども動線:主に子どもを中心とするスクールの利用動線
  • 安全管理と快適性のために分離されている

【「外履き動線」と「室内履き動線」】

  • 外履き動線:エントランス、フロントエリアからロッカーまで
  • 室内履き動線:ロッカーの入口で靴を脱ぎ、アクティビティへは室内シューズに履き替える
  • 日本的習慣からくる区分で衛生管理上も有効

【「ドライ動線」と「ウェット動線」】

  • ウェット動線:プール、浴室での体が濡れた状態の動線
  • ドライ動線:ロッカーでの裸足や靴下での乾いた動線
  • ウェットエリアの仕上げはタイルやノンスリップシートなど滑り防止や清掃頻度に配慮が必要

3. 総合クラブ以外の業態

【ジムスタジオタイプ】

  • プールを外したジムとスタジオがメインの施設
  • 温浴施設が加わったスパ&フィットネスもある
  • 坪あたりの会員数は4~5人程度(総合クラブの3人程度と比較して効率は高い)
  • DXによりジムエリアを24時間化するなど会員の利用時間帯の分散に成功

【24時間ジム】

  • この10年で急速に増加
  • 温浴はなくシャワーも少ないため建築コストが低い
  • メインのジムエリア比率が高く坪あたりの会員数も5人程度で面積効率も高い
  • スタッフは管理以外にパーソナルトレーナーなどの付加価値提供型も増加

【ブティッククラブ(単機能クラブ)】

  • ヨガ、ホットヨガ、サイクリングスタジオなどの総合フィットネスの人気プログラムが独立したもの
  • HIIT系など、バリエーションも豊富
  • クラス制が多く、枠の設定により会員をコントロールできる(坪あたり5人以上に対応可能)
  • 米国ではHIITなどは総合クラブでも導入され、ブティッククラブと一体化する傾向も

4. 管理の概念と基本

【施設・設備管理業務の4分類】

  • 点検:法定点検(建築基準法、消防法など)、委託(有資格者による点検)、自主点検(建築、設備、マシンなど)
  • 操作:法定運転操作(換気、空調、水質管理など)、自主(空調フィルター、ヘアキャッチャーなど)
  • 清掃:委託(日常、定期、特殊など)、自主(同上)
  • 修繕・更新

【施設・設備管理の意義と重要性】

  • 安全な施設提供は、サービス提供前の大前提
  • 安全確保のための6つの取り組み:
    1. 法令遵守:プールの水質管理、建築、設備などの安全管理関連法令を遵守
    2. 5S活動の徹底:整理、整頓、清掃、清潔、躾
    3. 各種マニュアルの作成:業務マニュアル、清掃マニュアルなど
    4. 始業前点検の実施:安全維持や顧客満足に重要
    5. 実行管理:チェックシートなどを活用した日常管理
    6. 安心・安全の見える化:活動指針やマニュアル実行の成果をスタッフや顧客に見える形で示す

【清掃の基本】

  • 清掃業務は、快適な衛生環境の確保、美観維持・向上、施設・設備の寿命を延ばす役割
  • 清掃の種類:日常清掃(スタッフまたは清掃員)、定期清掃(清掃専門業者)、特別清掃(清掃専門業者)
  • 清掃の基礎知識:
    1. 汚れの種類:植物質、動物質、鉱物質、化学物質
    2. 建材の材質:弾性系床材、硬質系床材、繊維系床材、木質系床材など
    3. 洗剤の特徴:中性洗剤(PH6~8)、弱アルカリ性洗剤(PH8~11)、強アルカリ性洗剤(PH11以上)、酸性洗剤(PH3以下)
    4. 消毒の基礎知識:除菌(菌やウイルスを取り除く)、抗菌(菌やウイルスの増殖を抑える)

5. 各種設備・機器の管理

【各種設備の管理】

  • 基本:正しい操作・点検方法を把握し確実に実践すること
  • 異常や故障時の対応:無理せず速やかに専門業者に連絡し対応を仰ぐ

【各設備の管理ポイント】

  • 給排水設備:漏水(天井のしみ、機械室の水たまりなど)に注意
  • 空調設備:空調用ボイラー設備の不完全燃焼に注意
  • 電気設備:漏電に注意
  • 水質管理:プール水質は遊離残留塩素濃度の測定(最低1日2回)、水素イオン濃度・濁度なども定期的に測定

6. 事故から学ぶ安全確保

【事故事例に学ぶ】

  • 施設・設備の不具合を原因とする事故:
    1. プール排水口における溺死事故:防止金具設置や管理の徹底が重要
    2. コンセント火災:過熱による火災発生の可能性
    3. ホテル火災:消化設備の正常稼働確認が必要
    4. プール天井落下事故:定期点検の重要性
    5. レジオネラ肺炎による死亡事故:循環ろ過装置の逆洗、配管の洗浄・消毒、日々の水質管理が重要
    6. 屋外広告物落下事故:定期的な点検が重要

第8章 労働・安全衛生

1. 労働者の保護

【労働法の役割】

  • 労働法とは: 労働者の権利を保護するさまざまな法律の総称
  • 労働の現状: 現在は「雇用社会」が主流で、多くの労働者が雇用関係のもとで働いている
  • 保護の必要性: 労働者は個人であり、使用者(組織)と比べて立場が弱い

【労働基準法】

  • 目的: 労働者の保護
  • 内容: 賃金、労働時間、休暇、強制労働の禁止などの最低基準を規定
  • 効力: 基準に満たない就業規則や労働契約はその部分が無効となる
  • 違反: 労働基準監督署の監督指導や罰則の対象となる

【労働者の定義】

  • 「職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」
  • 正社員だけでなく、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトも均等に労働基準法の適用を受ける

2. 労働契約

【労働契約の性質】

  • 定義: 労働者が使用者の下で労働することの対価として賃金を受け取る契約
  • 成立条件: 労働者と使用者の「合意」が必要
  • 形式: 書面での契約が望ましいが、口頭でも成立可能

【労働条件の明示義務】

  • 使用者は賃金、労働時間などの労働条件を労働者に明示する義務がある
  • 重要な労働条件については書面で伝える義務がある

【権利義務関係】

  • 企業側の義務:
    1. 安全配慮義務: 労働者が安全に働ける環境を提供する義務
    2. 環境配慮義務: ハラスメント防止を含む職場環境への配慮
  • 労働者側の義務:
    1. 誠実労働義務: 契約で定められた業務を誠実に行う義務
    2. 企業秩序維持義務: 企業秩序を維持するための規律を守る義務

3. 働くときのルール

【就業規則】

  • 定義: 会社ごとの働くルールを定めたもの
  • 必要条件: 常時10人以上の労働者を雇用している会社は作成が義務
  • 内容: 労働条件や職場規律についての詳細を規定
  • 周知義務: 使用者は就業規則を労働者に周知させる義務がある

【労働時間と休憩・休日】

  • 法定労働時間: 1日8時間、週40時間(一部例外あり)
  • 休憩時間:
    • 6時間超の労働→少なくとも45分
    • 8時間超の労働→少なくとも60分
    • 一斉付与が原則(労使協定により交替制も可能)
  • 休日: 週1回または4週で4日以上

【時間外労働・休日労働・深夜労働】

  • 時間外労働: 法定労働時間を超える労働
  • 休日労働: 法定休日に行う労働
  • 深夜労働: 午後10時から午前5時までの労働
  • 36協定: 時間外・休日労働をさせる場合に必要な労使協定
  • 時間外労働の上限規制:
    • 原則:月45時間・年360時間
    • 特別条項付き36協定でも、年720時間以内などの制限あり

【年次有給休暇】

  • 取得条件: 半年間継続して雇用され、全労働日の8割以上出勤した場合
  • 日数: 勤続年数に応じて増加(10日〜20日)
  • 時季指定義務: 年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、使用者は年5日の時季指定が必要

【賃金】

  • 最低賃金: 都道府県ごとに定められ、すべての労働者に適用される
  • 支払方法: 通貨で、直接労働者に、全額を、毎月1回以上、決まった日に支払う
  • 割増賃金: 時間外労働、休日労働、深夜労働に対して基本給に一定割合を増額して支払う

4. 社会保険と年金制度

  • 社会保険完備: 雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険に会社が加入
  • 制度の目的: 病気、怪我、出産、失業、高齢などの場合に必要な給付を受けられるようにする

5. 安全で快適な職場環境のために

【労働安全衛生法】

  • 目的: 労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境の形成
  • 事業者の義務: 労働災害防止のための措置
  • 労働者の義務: 安全衛生を守り、会社の措置に協力する

6. 職場のハラスメント

【ハラスメントの種類と防止措置】

  • セクシュアルハラスメント: 男女雇用機会均等法による防止措置義務
  • マタニティハラスメント: 妊娠・出産・育児休業に関するハラスメント
  • パワーハラスメント: 労働施策総合推進法(パワハラ防止法)による防止措置義務
  • ハラスメントの特徴: 人格権侵害の不法行為であり、加害者と使用者の責任が問われる

7. 多様な働き方と労働法

  • 非正規雇用の増加: 派遣社員、契約社員、業務委託・請負などの働き方
  • 労働者保護: 正社員以外も「労働者」として労働法の保護を受けられる
  • 業務委託・請負の注意点: 注文主の指揮命令を受けない「事業主」として扱われ、労働者としての保護は受けられない

8. 職場の安全衛生の基本

【安全衛生とは】

  • 定義: 従業員が安心して働ける職場環境
  • 内容: 「労働安全」(負傷せず安全に働く)と「労働衛生」(病気にかからない)
  • 最近の傾向: 身体的安全だけでなくメンタル面の安全衛生にも注目

【安全衛生の目的】

  • 人材保護: 企業にとって重要なリソースである「人材」を守る
  • 災害防止と健康維持: 従業員の健康を保ち、危険のない作業環境を整える
  • 生産性向上: 安全衛生が守られた職場は不調を起こしにくく、従業員のパフォーマンス向上につながる

【安全衛生管理体制】

  1. 総括安全衛生管理者: 企業全体の安全衛生管理を統括する責任者
  2. 安全衛生推進者: 職場の安全衛生管理の推進に力を注ぐ役割
  3. 安全管理者: 職場の安全管理の担当者
  4. 衛生管理者: 職場の健康と安全に関する問題に責任を持つ

【安全管理活動】

  • 5S: 整理、整頓、清掃、清潔、躾(職場の効率向上と災害防止)
  • ヒヤリ・ハット活動: 軽微な事故や「ヒヤリ」とした事例に対して再発防止対策を講じる
  • KY活動: 「危険予知活動」で事故や災害の危険を未然に防ぐ
  • 安全提案制度: 不安全箇所の改善案を提案・実施する取り組み

【衛生基準】

  • 換気: 十分な換気の確保
  • 照度: 十分な明るさの確保
  • 救急用具: 必要な救急用具と材料の常備
  • 体調スペース: 有効に利用できる休憩場所などの確保

【使用薬品の害と取り扱い】

  • 危険性: 取り扱いを誤ると事故につながる薬品や健康を害する薬品の存在
  • 安全対策: SDSに基づく危険性評価と対策
  • 代表的事故例: ポリ塩化アルミニウムと次亜塩素酸ナトリウムの混合による塩素ガス発生

【健康増進のための措置】

  • 健康診断: 医師による健康診断の実施義務
  • 健康診断結果の取り扱い: 個人情報として適切な管理が必要
  • ストレスチェック制度: 労働者のメンタルヘルス不調を防ぐための制度

【感染症対策】

  • 感染成立の3要因: 病原体(感染源)、感染経路、宿主
  • 感染対策の原則: これらの要因のうち少なくとも1つを取り除くこと
  • 標準予防策: すべての血液、体液、分泌物などを感染源となる可能性があるものとして取り扱う考え方

 

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