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健康運動指導士と健康運動実践指導者の違いを解説

健康運動指導士と健康運動実践指導者の違いを解説します。

資格の名前が似ているので分かりにくいですよね。

この2つの資格は厚生労働省系の公益財団法人健康・体力づくり事業財団が発行しています。

どちらの資格も国民の健康増進をサポートする運動指導者の資格です。

2つの資格の決定的な違いは養成講習会のカリキュラムです。

その他にも「養成講習会への参加条件」や「養成校の違い」、「厚生労働省の認定施設の配置義務の違い」、「資格取得後の更新時の違い」など多くの点に違いがあります。

資格の取得を検討しているか方はぜひ本記事の内容を参考にしてください。

では、一つ一つ解説しますね。

 

まず養成講習会のカリキュラム履修単位数に大きな違いがあります。

健康運動指導士と実践指導者の違い

健康運動指導士と実践指導者のカリキュラムの違い

養成講習会のカリキュラム履修単位数に大きな違いがあります。

健康運動指導士の養成講習会の総単位数は「104単位」、実践指導者は「33単位」です。

ただし、健康運動指導士は、医師や看護師、管理栄養士、実践指導者などの資格を保有していれば免除される単位もあります。

健康運動指導士は実践指導者のカリキュラム、単位数の全てをカバーしています。

健康運動指導士は、運動の理論や実習のみならず、メディカル分野の学習も幅広く組まれています。

特に基礎医学の分野「生活習慣病(NCD)」と「生理学」は各11単位と多く設定されています。

健康運動指導士はメディカル分野も学習するので、家族など身近な人へ健康や運動のアドバイスができます。

更に実習の「健康づくり運動の実際」についても、実践指導者の13単位に対して21単位と多く、営業中のフィットネスクラブでの実習もカリキュラムに組まれています。

健康運動指導士の受講者の中には、医師や管理栄養士、看護師、保健師などの国家資格を保有する人も多くいます。

医療関係者には、健康運動指導士の資格に対する評価が高い裏付けといえます。

 

実践指導者の養成講習会には生活習慣病(NCD)の単位がないのです。NCDや生理学は重要な医学的基礎知識に関わる科目です。

※1単位:90分

健康運動指導士 実践指導者
科目 単位数 単位数
講義 実習 講義 実習
1.健康管理概論 3
2.健康づくり施策概論 3 2
3.生活習慣病(NCD) 11
4.運動生理学 11 3
5.機能解剖とバイオメカニクス 6 2
6.健康づくり運動の理論 8 3
7.運動傷害と予防 4 2 2
8.体力測定と評価 3 4 1 2
9.健康づくり運動の実際 21 13
10.救急処置 2 2
11.運動プログラムの実際 6 4
12.運動負荷試験 1 2
13.運動行動変容の理論と実際 2 1 1
14.運動とこころの健康増進 2 1
15.栄養摂取と運動 7 2
小計単位数 69 35 16 17
合計単位数 104 33

養成講習会への参加条件の違い

健康運動指導士と実践指導者の養成講習会は、誰ても参加できるわけてではなく、学歴や所有資格などの条件があります。

健康運動指導士の方が養成講習会への参加条件のハードルが高いです。

健康運動指導士の養成講習会への参加条件

・歯科医師、看護師、栄養士、薬剤師、理学療法士等で4年以上の大学卒業者
・医師、保健師、または管理栄養士
・4年制体育系大学の卒業者
・健康運動実践指導者、日本スポーツ協会公認資格の所有者等

実践指導者の養成講習会への参加条件

・体育系短期大学又は体育専修学校(2年制)若しくはこれと同等以上の学校の卒業者(卒業見込み含む)
・3年以上運動指導に従事した経験のある者
・運動指導に関連する資格を有する者
・保健医療に関する資格を有する者
・学校教育に関する資格を有する者

 

次は、健康運動指導士と実践指導者の資格制度が創設された経緯について解説します。

実践指導者資格は健康運動指導士資格を取得するためのステップとして考えている人もいます。

健康運動指導士の資格制度ができた経緯

2019年現在、健康運動指導士の資格保有者は全国で18,253名、10年前の2009年から約5,000人増えています。

健康運動指導士の資格制度が生まれた経緯を以下に説明します。

1980年代に入り、高度経済成長により国民の経済が豊かになり欧米食が普及するにつれて栄養過多の人が増え、また交通機関の発達に伴う運動不足によるメタボリックシンドローム、高齢化の進展により生活習慣病の増加に拍車がかかりました。

このような社会背景から年々医療費の増大が注目されるようになり、生活習慣病の増加にブレーキをかけるには治療よりも、まず予防が重要であることが叫ばれるようになりました。

そこで、厚生省を中心に健康づくりのための運動を普及するための手段が研究され、1988年に国民の健康づくりに寄与する目的で健康運動指導士の養成事業がスタートしました。

 

対症療法から予防にも力を入れる方向に舵が切られたんですね。

 

健康運動指導士はフィットネスクラブやアスレティッククラブ、病院や診療所、保健所・保健センター、介護施設などで、国民の健康を維持・改善、安全かつ適切な運動プログラムを作成・指導しています。

健康運動実践指導者資格の上位資格といえます。

資格取得者の意識の違い

2019年現在、実践指導者の資格保有者は全国に20,323名、2009年からの10年間に約5,000人も減少しています。

資格保有者の減少の原因は、

①資格を維持するためには5年ごとの資格登録更新で「更新料20,000円+消費税」の支払いが生じる。

②実践指導者は健康運動指導士の資格を取得しやすい仕組みになっている。

上記の②は実践指導者が健康運動指導士の養成講習会を受講する場合は養成講習会の単位が大幅に免除(104単位→40単位)されます。

健康運動指導士資格を取得したら、

①実践指導者の資格を保有する大きな理由がなくなる。

②資格登録更新料「更新料20,000円+消費税」が2倍に増えるため実践指導者の資格を放棄している

 

健康運動指導士の受講資格を得るために、実践指導者を取得する人も多いのです

実践指導者は健康運動指導士が作成した運動プログラムに基づいて実際に運動指導を担うことになっています。

健康運動指導士の配置義務

健康運動指導士は、厚生労働省が主導するかたちで創設された資格で、現在も大臣認定の制度とひもづけされています。

それは、一定の基準を満たしたフィットネスクラブやスポーツクラブ等を認定する「運動型健康増進施設」と「指定運動療法施設」で、認定を受けた施設には最低1名の健康運動指導士の配置が義務付けられています。

「運動型健康増進施設」とは、1988年に厚生省(現在の厚生労働省)が国民の健康づくりを推進する上で一定の基準を満たしたスポーツクラブやフィットネスクラブを認定(大臣認定)する制度で、2020年現在で認定施設は全国に約350施設ある。

「指定運動療法施設」とは、上記の「運動型健康増進施設」のうち、疾病の治療のための運動を行うのに適した施設に与えられる制度、この指定を受けた施設では、主に生活習慣病患者が対象で医師が運動療法を行うことが適当であると判断した場合、医師の運動処方箋に基づいて、指定運動療法施設において、週1回以上、8週間以上の期間にわたって運動した場合に施設利用料や指導料が所得税の医療費控除の対象となる。

 

実践指導者の配置義務

資格を発行している団体は2つの資格が機能させるために実践指導者は集団に対する運動指導スキルの向上を目指し差別化を図ろうとしています。

しかし、これは机上の計画で実際には機能していません。

 

実際の現場では明確に業務分担されているわけではありません。実践指導者でも有能な指導者はプログラム作成もしていますよ。

 

ただし、一つだけ実践指導者が必要なケースがあります。

それは、厚労省が認定している「指定運動療法施設(前述)」には、健康運動指導士の他に、「実践指導者」1名の配置を義務付けています。

資格保有のメリットの比較(アンケート結果)

健康運動指導士又は健康運動実践指導者を保有していることでメリットを感じているか否かを聞いたアンケート調査結果です。

健康運動指導士の方が「メリットあり」は高めですが、両資格ともにメリットを感じている人は少ないと感じます。

勤務先でのサポートや待遇、特に資格手当などの給与面での評価も関係していると思われます。

資格 メリットあり メリットなし
健康運動指導士保有者 30.5% 69.5%
実践指導者保有者 17.8% 82.2%

「公益財団法人健康体力づくり事業財団が2019年に実施した資格保有者に対して実施したアンケート調査」から

養成校の違い

健康運動指導士と実践指導者には養成校制度があります。

養成校制度とは、主催者が認定した、大学や専門学校、これらに準ずる教育機関で在学中に所定の講座を受講することで、通常の養成講習会の受講を免除してもらえる制度です。

養成校で対象講座を履修すれば、残るは認定試験を受けるだけです。

この養成校制度は、おおむね健康運動指導士では体育学部や健康スポーツ系の学部、学科を有する大学および大学院、実践指導者では健康スポーツ系の専門学校などの教育機関です。

健康運動指導士の養成校一覧

実践指導者の養成校一覧

資格更新時の更新単位の違い

健康運動指導士と実践指導者の登録期間は同じ5年間、その間に主催者又は主催者が認定した認定講習会を履修する必要があります。

健康運動指導士は20単位以上

健康運動指導士は、登録期間の5年間、更新時までに20単位以上(うち実習5単位以上含むこと、更に必修要件の獲得)を履修する必要があります。

「必須要件の獲得」とは:主催者又は共催者が開催する更新必須講習会を受講すること。

実践指導者は10単位以上

健康運動実践指導者は、登録期間5年間、更新時までに10単位以上(うち実習5単位以上、全部が実習でも可) を履修する必要があります。 

「いずれも1単位:1時間」

 

実践指導者は更新単位が半分、全てが実習でもOK、また講習会の必須要件もありません。

まとめ

健康運動指導士と実践指導者の違いを解説しました。

どちらも民間資格ですが資格が創設された時には厚生省が主導したため国家資格になる可能性もありました。

今後国家資格に格上げされる可能性はゼロではありませんが可能性は非常に低いところです。

ただし今後は健康運動指導士や実践指導者が活躍できる機会が増えてくると考えられます。

国は国民の健康増進の基本方針として以下の5つの政策を柱としています。

①健康寿命の延伸と健康格差の縮小

②主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底

③社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上

④健康を支え、守るための社会環境の整備

⑤栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善

将来的には健康運動指導士や実践指導者は国民の健康づくりをサポートや国が掲げる生涯スポーツ社会の実現と健康寿命の維持延伸に貢献できると考えます。

「健康運動指導士」資格試験研究会

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