健康運動指導士と健康運動実践指導者(以後、実践指導者)の勤務場所や仕事の内容です。
この2つの資格は昭和63年に厚生労働省が中心になって制度化した資格で公益財団法人健康体力づくり事業財団が発行・管理しています。
健康運動指導士の資格は、国家資格に認定される可能性もあったようですが紆余曲折の末、民間資格となりました。
その後も国家資格に格上げする働きかけがされましたが、実を結びませんでした。
現在、この2つの有資格者は全国に約4万人います。
ここ10年間、健康運動指導士は増加傾向、実践指導者は減少傾向で全体としてはほぼ横ばいです。
これらの資格を取得した人は、
「どこで働いているの?」
「仕事の内容は?」
そんな疑問にお答えします。
2019年に健康体力づくり事業財団が行った資格保有者へのアンケート調査を参考にしました。
勤務先や仕事内容
資格を生かした仕事をしている割合
健康運動指導士と実践指導者の資格保有者の約7割が資格を生かした仕事をしています。
そのうち、資格を最大限生かして働いている人は約26%です。
国家資格と比べるとかなり低い数値です。
無職又は学生を除くと、約2割の人が資格とは別の分野の仕事をしています。
資格の活用 | 比率 |
雇用されて資格を肩書に使用 | 26.3% |
業務の一部に資格を活用 | 43.1% |
資格を活用していない | 20.6% |
無職又は学生 | 9.1% |
無回答 | 0.9% |
具体的な仕事内容
上表の「雇用されて資格を肩書に使用」と「業務の一部に資格を活用」している方の具体的な仕事内容です。
こちらは複数回答であり、一つの仕事内容だけをこなしている人は少なく、「運動の指導」業務にしても一連の流れの中で仕事をしています。
また、「運動指導」にはトレーニングジムの監視業務も含まれているので比率が高くなっています。
監視業務は、トレーニングジムの利用者の安全管理やマシーンの安全な使い方などをアドバイスするサポート業務なども含まれています。
「教育・講演等」は、企業や地方自治体の健康セミナー、健康スポーツ指導者向けのセミナーの講師などのお仕事です。
「特定保健指導」は、生活習慣病を予防するための指導であり、主にメタボリックシンドロームの予防と改善が大きな目的となっています。企業や地方自治体での運動指導です。
仕事内容 | 割合 |
運動の指導 | 77.5% |
運動プログラムの作成 | 38.3% |
教育・講演等 | 22.4% |
特定保健指導 | 18.8% |
生活指導 | 18.3% |
施策・事業企画 | 15.6% |
実務運営 | 15.4% |
経営管理 | 7.9% |
その他 | 3.5% |
運動指導を受ける対象者
資格者が運動指導する対象者は様々です。
資格者の中にはアスリートや俳優のパーソナルトレーナーを請け負っている人もいます。
しかし、全体としては「健康な中・高齢者」への運動指導が飛びぬけて多いです。
フィットネスクラブの利用者の中心が、健康な中高齢者であることが裏付けされた結果です。
フィットネスクラブは健康な中高齢者のコミュニティになっています。
また、中にはメタボリックシンドロームやハイリスク者の運動指導を担当しているスキルの高い資格者もいます。
対象者 | 割合 |
健康な中・高齢者 | 81.1% |
要介護(予備軍)高齢者 | 45.2% |
メタボリックシンドローム該当者 | 42.2% |
障害、けが等のリハビリ者 | 32.4% |
ハイリスク者(服薬者) | 28.6% |
その他 | 11.4% |
運動指導の頻度
現在、指導を行っている資格者の指導の頻度です。
「ほぼ毎日」と「週に数回」を合算すると、約80%になります。
指導回数 | 割合 |
ほぼ毎日 | 47.0% |
週に数回 | 31.8% |
月に数回 | 13.5% |
年に数回 | 6.5% |
その他 | 1.2% |
勤務場所は?
勤務場所は以下の通りです。
「フィットネスクラブ」に勤務する人が多い一方で、「病院・診療所」や「市役所・保健所等」にも一定割合が勤務しています。
これらの勤務場所では、健康運動指導士の割合が高くなっています。
高齢社会の進行に伴い、今後「老人介護・保健・福祉施設等」の割合が高くなると推測されます。
勤務場所 | 健康運動指導士 | 実践指導者 |
フィットネスクラブ | 22.9% | 22.4% |
病院・診療所 | 16.1% | 9.7% |
フリーのインストラクター | 12.2% | 8.3% |
市役所・保健所等 | 8.0% | 3.8% |
老人介護・保健・福祉施設等 | 6.5% | 7.5% |
教員・学校関係者 | 6.1% | 2.8% |
健康保険組合・企業の健康管理部門 | 1.8% | 0.5% |
その他(無職、在学中) | 26.4% | 44.8% |
働き方は?
正社員・職員が55.3%と過半数です。
フリーインストラクターと自営の合計が21.4%と、2割以上が組織に属さずに活動しています。
働き方 | 割合 |
正社員・職員 | 55.3% |
契約社員・非常勤職員 | 10.0% |
フリー | 13.3% |
自営 | 8.1% |
パート・アルバイト | 9.1% |
その他 | 0.8% |
無回答 | 3.3% |
どんな事に仕事の魅力を感じるか
資格保有者として運動指導の仕事をする中でどこに魅力を感じているかを調べたアンケート結果です。
社会貢献や人の健康をサポート、コミュニケーションができる点が魅力と感じている人が多いです。
一方で「収入が安定している」や「就職・転職に困らない」については、低い数値となりました。
仕事に魅力を感じるところ | 割合 |
人の健康をサポートできる | 75.8% |
社会の健康づくりに貢献できる | 54.9% |
人とコミュニケーションがとれる | 50.6% |
健康の知識を得ることができる | 50.1% |
指導することが楽しい | 47.6% |
専門性の高い仕事である | 33.6% |
自分の健康が維持できる | 32.7% |
就職・転職に困らない | 1.4% |
収入が安定している | 0.9% |
その他 | 1.8% |
特にない | 2.5% |
フリーインストラクターの活動の広げ方
地方自治体への営業活動
地方自治体の特定保健事業では地域の住民に対して健康運動指導をしています。
地方自治体は介護予防や認知症予防の教室を年間計画で実施しており主に健康運動指導士がグループ指導を担当しています。
地方自治体としては健康運動指導士に直接依頼する場合と企業経由で派遣してもらう場合があります。
地方自治体に営業活動するか派遣企業に登録できれば地方自治体の仕事をすることができます。
営業のアプローチ先は地方自治体の健康推進課や健康づくり課などです。
自治体によって担当部署の名称が異なりますのでホームページで確認しましょう。
地方自治体は年度の予算が決められているため突発的な企画イベントは実施できません。
そこで最初はボランティアで指導を請け負い次年度以降に予算化してもらう方法もあります。
指導能力の高さやホスピタリティが参加者に伝われば、仕事につながる可能性が高くなります。
自分のブログを使った営業活動
フリーのインストラクターは、マーケティング力や営業力、更に企画力も求められます。
そこで自分活動ブログを作って広めることをお勧めします。
自分の活動ブログを開設して日々の指導内容や活動状況などをインターネット上に公開するのです。
ブログのプロフィールには自分の得意とする指導分野や経験などを入れてアピール。
最近は、企業や地方自治体の方もインターネットを使って情報収集していますので人材を探す時にもネットを活用しています。
ブログに運動指導を請け負うことを記載していれば問い合わせがくる可能性があります。
講習会などで横のつながりを広げる
健康運動指導士や実践指導者は、資格を継続維持するために健康体力づくり事業財団が認定している更新講習会を受講しなければなりません。
更新講習会に参加した時には他の受講者と積極的にコミュニケーションをとってつながりを広げることも必要です。
指導者同士が情報交換できるコミュニティが存在しないため更新講習会はつながりを作るチャンスです。
Lineやメールなどでつながっていれば手が回らない仕事を請け負った時などに紹介してもらうなどお互いに仕事を融通しあえます。
「ストアカ」に講師として登録
フリーのインストラクターにおすすめなのが「ストアカ」です。
「ストアカ」とは、ストリートアカデミーの略語で、教えたい講師と学びたい生徒を結びつけるマッチングサイトのことです。
ストアカに講師として登録し、自分が持つているスキルをオープンな場所でアピールして集客してみませんか?
指導内容や金額は自分で設定、クライアントの生徒はグループでも個人でも募集することができます。
報酬は、自分で設定して、その中からストアカに手数料を支払うシステムたです。
「ストアカ」とは、個人や企業が主催する講座・教室・レッスン・ワークショップが31,000件以上 日本最大級のまなびのマーケットです。
まとめ
健康運動指導士や実践指導者の資格を保有しているからといって仕事が保証されている訳ではありません。
社会的な認知度が低い資格ですので自分で営業活動することも大切です。
指導のスキルだけではなく営業力や企画力、マーケティング力も必要になります。
総合的なスキルが向上すれば活躍の場は増えてきます。
今やネット社会ですので個人で活動する方は、ご自分の資格や指導経歴などを公開し日々の指導活動などをブログで発信しましょう。
経験を積みながら間口を広げておくことが大切です。
次のサイトは、健康運動指導士を国の健康施策に組み込み、もっと活用してほしい、そんな思いを記事にしました。
健康運動指導士の資格は国家資格ではありません。社会的な認知度もあまり高くないため活躍の場が限られています。今後、介護施設…
「参考資料:公益財団法人健康体力づくり事業財団が2019年に両資格者を対象に実施したアンケート」